驚いたり呆れたりした人に向かって、「○○にようこそ」と言う ~ドラマ「After Life/アフター・ライフ」の場合
◆概要
【驚いたり呆れたりした人に向かって、「○○にようこそ」と言う】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:ドラマ「After Life/アフター・ライフ」(第5話)
▶1
本作の主人公はトニー(中年男性)。
彼は愛する妻をがんで亡くし、そのショックから立ち上がれないでいた。いまやすっかり荒んだ生活を送っている。
いつものように
・Step1:精神科医のカウンセリングを受けるトニー。
・Step2:彼は、何もかもにイライラする、つい怒鳴ったり喧嘩したりしてしまうと語った。例えば「昨日はデカい声であくびする男を殴りたくなった!」「クソうるさいったらありゃあしない!」。
・Step3:精神科医はなだめる「皆、何かにイラついているものだ」「しかしだからといってそれを表には出さない」「例えば僕はジントニックの氷を食べる人が嫌いだ」。
・Step4:するとトニーは、自分もジントニックの氷を食べるやつがムカつくと言った。曰く「俺が最初に思うのは、氷で喉を詰まらせて、床に崩れて苦しめばいいってことだ。それでそいつに向かって『氷を食うからこうなるんだバカ!』と言ってやりたい」。
・Step5:精神科医は、あまりにも攻撃性の高いトニーに呆れて「……僕はそんなことは思わないな」。
・Step6:するとトニーは「俺の頭の中にようこそ」。
▶2
ご注目いただきたいのは、「俺の頭の中にようこそ」というトニーのセリフである。
要するに「あんたがどう思うかは知らないが、俺はそうなんだ。そう思っちまうんだ」という意味だが――ストレートにそう言ってしまっては面白みを欠く。
そこで【驚いたり呆れたりした人に向かって、「○○にようこそ」と言う】という技法の出番だ。「あんたがどう思うかは知らないが、俺はそうなんだ。そう思っちまうんだ」を「俺の頭の中にようこそ」に置き換えたことで、スマートで印象的なセリフになったといえるだろう。