相手の言葉を下敷きにして、嫌みったらしく非難したり皮肉ったりする ~ドラマ「ジェントルメン」の場合
◆概要
【相手の言葉を下敷きにして、嫌みったらしく非難したり皮肉ったりする】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:ドラマ「ジェントルメン」(第3話)
▶1
本作の主人公はエディ(40歳頃の男性)。
彼は、イギリスの侯爵家の当主である。
立派な家柄。
大変な財産。
……のはずが、亡き父のせいで巨大麻薬組織と縁ができてしまった。
あんな連中と付き合っていたらろくなことになるまい。かくして「いくつか仕事を手伝う代わりに縁を切る」という条件で、エディはいま彼らの指示にしたがって動いている。
ある日、
・Step1:「倉庫からとある高級車を盗む。危険はまったくない」という仕事を請け負ったエディ。
・Step2:ところが実際に仕事にかかると、倉庫にはなぜか拷問を受けている男がいた!盗み出した高級車にはなぜか大量のドラッグが積んであった!人がナタでぶった斬られて殺されるのを間近で目撃してしまった!……嗚呼、話がまったく違う!
一体全体どうなっているんだ!
・Step3:エディは憤る。
・Step4:ところがスージー(30歳頃の女性、巨大麻薬組織の実質的なリーダー)は平然と言った「どんな仕事でもそうでしょ?上手くいく日もあれば、上手くいかない日もあるわ(Sometimes you have your good days... and you have your not-so-good days.)」。
・Step5:スージーの言葉に対して、エディは「勝つ日もあれば、人がナタでぶった斬られて死ぬのを見る日もあるってわけか(Yeah, sometimes you win, sometimes you watch someone get hacked to death with a machete.)」。――皮肉である。
・Step6:が、さすがは若くして組織のリーダーを務めるだけはある、スージーはまったくへこたれず「大事なのはどんな時にも毅然としていることよ」「あなたにはこの仕事の才能があるわ」。
▶2
ご注目いただきたいのは、「勝つ日もあれば、人がナタでぶった斬られて死ぬのを見る日もあるってわけか」というエディのセリフである。
要するに「どんな仕事でもそうでしょ?上手くいく日もあれば、上手くいかない日もあるわ」というスージーの言葉に対して「だからって今回の仕事はあまりにもひどすぎる」と抗議しているわけだが――ストレートにそう言ってしまっては面白くない。
そこで【相手の言葉を下敷きにして、嫌みったらしく非難したり皮肉ったりする】という技法の出番だ。スージーの言葉を踏まえて「○○な日もあれば○○な日もある」という表現を流用したことでリズム感が生まれ、皮肉たっぷりの愉快なシーンになったといえるだろう。