「極端に劣ったもの」や「下品なもの」など、比較対象として持ち出した時点で失礼にあたるものと比較することで、からかったり冷やかしたりする ~ドラマ「After Life/アフター・ライフ」の場合
◆概要
【「極端に劣ったもの」や「下品なもの」など、比較対象として持ち出した時点で失礼にあたるものと比較することで、からかったり冷やかしたりする】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:ドラマ「After Life/アフター・ライフ」(シーズン2の第2話)
▶1
本作の主人公は、トニー(中年男性)。
彼には友人がいる。ダフネ(若い女性)だ。
ダフネは娼婦だが、トニーとダフネの間に性交渉はなく、2人はあくまでも友人として付き合っていた。
いろいろあってある日、
・Step1:トニーが珍しく手料理を作った時のことだ。
・Step2:ダフネはそれを一口食べて「……びっくり!」。
・Step3:トニーが訊く「まずいか?」。
ダフネは思わず笑い出す。
・Step4:そして言った「驚くほど激まず!」。
・Step5:トニーは訊く「どれくらいまずい?」。
・Step6:ダフネは「ふふふっ」と再び笑うと、「私が今日仕事で口に入れた一番まずいものよりも、もっとまずかった」。
▶2
ご注目いただきたいのは、「私が今日仕事で口に入れた一番まずいものよりも、もっとまずかった」というダフネのセリフである。
要するに「もうね、信じられないほどまずかったわよ!」とからかっているわけだが――ストレートにそう言ってしまっては何も面白くない。
そこで【「極端に劣ったもの」や「下品なもの」など、比較対象として持ち出した時点で失礼にあたるものと比較することで、からかったり冷やかしたりする】という技法の出番だ。
改めてダフネのセリフをご覧いただきたい。
「私が今日仕事で口に入れた一番まずいものよりも、もっとまずかった」。
上述の通りダフネは娼婦であることからして、「私が今日仕事で口に入れた一番まずいもの」とはおそらくは男性器や精液だろう。それと比べてもまずい、それほどひどい料理だとからかっているわけだ。
「もうね、信じられないほどまずかったわよ!」を「私が今日仕事で口に入れた一番まずいものよりも、もっとまずかった」に置き換えたことで、ウィットに富んだ印象的なセリフになったといえるだろう。