鑑賞者・読者から愛される「善人キャラ」の描き方!!|【第6χ(第26話) 魅惑のΨ高級コーヒーゼリー】「斉木楠雄のΨ難(第1期)」を三幕構成で分析する
▶ 「三幕構成」を詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ👽 → シド・フィールドの「三幕構成」をバッチリ説明するぜ!!
分析対象
三幕構成
ポイント①
本話のストーリーをざっくり整理すると……
・第1幕、第2幕前半:スーパー。楠雄がどのコーヒーゼリーを購入するか長々と逡巡する → 結局、1個2950円もする高級コーヒーゼリーを購入
・第2幕後半: 野球ボールが飛んできて、ゼリーの入った袋にぶつかる。楠雄は慌てて野球ボールを彼方へ吹き飛ばす → 小学生くらいの少年が大切にしていたボールだと判明 → 楠雄は超能力「アポート」(金銭的に同価値のモノの位置を入れ替える能力)を発動
・第3幕(1):高級コーヒーゼリーを代償に、野球ボールが戻ってくる → 野球ボールに3000円ほどの価値があったことが判明(だから、同価格のゼリーが犠牲になったのだ) → 大喜びする少年。楠雄は「これでよかったんだ……」と悲しみを堪える
・第3幕(2):後日、少年とその家族が楠雄に礼を言いにきた。手土産は……高級コーヒーゼリー3個だ!
ポイント②
<1>
さて、本記事で注目するのは「楠雄の善人っぷり」です。
具体的には……
・第2幕後半:見ず知らずの少年のために、ボール探しを手伝ってやる
・第3幕:自分の大好物が犠牲になりショックを受ける。しかし少年の笑顔を見て、「これでよかったんだ」と悲しみを堪える
メッチャいい奴ですよね!
本話では、いつにも増して楠雄の善人っぷりが強調されているように見えます。
<2>
ところで、あなたの作品に善人キャラを登場させる時には注意が必要です。
▶ 注意①
まず何よりも、善人キャラは嫌らしく見えるおそれがあります。
「確かに善人なんだけどさぁ、ただ……鼻につくよね!鬱陶しい!なんかイラッとする!1人だけいい子ぶっちゃってさ!」というわけですね。
▶ 注意②
もう1つ、善人キャラは面白味のない人物になりがちです。
「確かに善人なんだけどさぁ、ただ……面白くないよね!なんか普通!キャラが立ってない!個性が感じられない!」という具合です。
以上をまとめると、そう!善人キャラは鑑賞者から愛されづらいのです。
「善人キャラよりも悪人キャラの方が人気が高い」というのは、古今東西多くの物語に見られる現象です。
<3>
上述の通り、善人キャラは愛されづらい。
ゆえに、あなたの作品に善人キャラを登場させる時には工夫が必要です。ズバリ、「【愛されづらいキャラ = 善人キャラ】を、【愛されキャラ】に変えるための工夫」です。
<4>
それでは、本話にどのような工夫が施されているか見てみましょう。
ご注目いただきたいのは、第1幕~第2幕前半。「楠雄がどのコーヒーゼリーを購入するか長々と逡巡し、最終的には、何を血迷ったのか常軌を逸した高級品を買ってしまう」というシーンです。
ほとんど万能の超能力者にして、虚無的・厭世的な少年。それが楠雄です。そんな彼がひどく真面目な顔をして、コーヒーゼリーについてあれやこれやと悩み抜く!
なんだかかわいらしいですよね♥
重要なのは、この「かわいらしさ」です。
「ちょっと間抜けな感じ」「性格上の隙」「他人からは理解されぬこだわり」なんて言い換えてもいいでしょう。私たちはそういった部分に魅力を覚え、そのキャラをぐっと身近に感じるものです。
つまり本話で使われているテクニックは……「物語の前半を丸ごと使って、楠雄のかわいらしさを描写 → その後彼がどれほど善行を為そうとも嫌な感じがしない♥」。
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(担当:三葉)