アニメ「それでも町は廻っている」第4話前半を2つの視点から分析する☕
引き続き、アニメ「それでも町は廻っている」を分析します。本記事で取り上げるのは第4話前半「恋の方程式」。これ以前のエピソードを分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!
分析対象
あらすじ
【ポイント①】生真面目な堅物キャラが、大雑把なキャラと行動を共にすることになり……!!
<1>
本話は、【歩鳥と森秋先生のやりとりをフィーチャーしたエピソード】だ。
2人のやりとりを描いたエピソードはこれまでにもあったが(例えば、第1話後半「至福の店 アフター」)、本話はそれを前面に押し出している。
<2>
まずは、2人の人となりを改めて確認しておこう。
・歩鳥:大雑把で行き当たりばったりな性質。堅苦しいことは嫌い。一見アホに見えるが、バカではない。いわゆる<ストリートワイズ>が高いタイプ。
・森秋先生:生真面目で几帳面な性質。不合理なことが嫌い。頭脳明晰な理論派だが頭が固く、そして精神的に脆いところがある。
そう、2人は大きくタイプが異なるキャラなのだ。<真逆>と言っても過言ではないだろう。
<3>
これだけタイプが違うのだから、事あるごとに2人が揉めるのは納得できるが……ここでご注目いただきたいのは、【2人が揉めた時、害を被るのが十中八九森秋先生の方だ】ということである。
本話も例外ではない。歩鳥が最後まで能天気であり続けるのに対して、森秋先生は胃を痛め、そして狂気に蝕まれつつある。
つまりこれ、【生真面目な堅物キャラが、大雑把なキャラと行動を共にすることになり、その行き当たりばったりな言動にイライラしたり苦しめられたりする物語】と整理できるだろう。私たち鑑賞者は<次第にぶっ壊れていく堅物キャラ>を見て、思わず吹き出してしまうのである。
<4>
ちなみに……この【生真面目な堅物キャラが、大雑把なキャラと行動を共にすることになり、その行き当たりばったりな言動にイライラしたり苦しめられたりする物語】は、洋の東西を問わず古くから愛されてきたストーリータイプである(皆、堅物キャラがぶっ壊れていくのを見るのが大好きらしい)。
例えば、映画の世界には「大災難P.T.A.」という名作がある。
【ポイント②】森秋先生はなぜ歩鳥を見捨てず、それどころか過剰なほどに構うのか?
<1>
上述の通り、森秋先生は歩鳥の行き当たりばったりな言動にイライラしたり苦しめられたりするのだが……ここで素朴な疑問。森秋先生は、なぜ歩鳥とまともに向き合おうとするのだろうか?
だって、相手は追試ですら0点を取るような劣等生だ。いっそのこと放っておけばよいのではあるまいか?
ここからは、なぜ森秋先生が歩鳥を無視しないのか、それどころかなぜ過剰なほどに構い、そしてイライラしたり苦しんだりしているのか、その理由を考えてみたい。
<2>
ご注目いただきたいのは、【森秋先生が小学生時代の嫌な経験をきっかけに教職に就いた】という点である。
そもそも……彼は幼い頃から几帳面だったらしい。だから、割り算の<余り>を納得できなかった。「そんな中途半端な!」と思わず声が出た。
それに対して、当時の担任教師は何と言ったのか?
彼女は言った「割り算の余りは果物の種のようなものよ」。誠実とは言いがたい言葉だ(「森秋少年はまだ小学生。簡潔に説明する必要がある」「教育指導要領に沿って授業せざるを得ぬのだ。余計な説明をしている時間はない」などなど担任教師にも同情すべき点はある。しかし、不誠実なはぐらかしであることには間違いないだろう)。
担任教師の説明に対して、森秋少年は納得しなかった。「それでは答えになっていない」と思った。しかし、彼はまだ小学2年生だ。反論できず、言いくるめられてしまう。
要するに、担任教師に敗北した。
かくして、もやもやした思いだけが残った。
そして、この<もやもや>をきっかけに彼は数学教師になる。
つまり森秋先生は、「数学が好きだから」とか「素晴らしい数学教師との出会いがあり、自分もあの先生のようになりたいと思ったから」とかいったポジティブな理由で教職に就いたのではない。「あの不誠実な担任教師に負けっ放しは嫌だ!もやもやは嫌だ!」という理由で教師になったのだ。
<3>
さらにもう1つご注目いただきたいのは、【森秋先生が「歩鳥とあの時の担任教師はそっくりだ」と認識している】という点である。
以上をまとめると……そう!森秋先生にとっては<歩鳥 ≒ 憎き担任教師>であり、<歩鳥とのやりとり ≒ 憎き担任教師とのリベンジマッチ>なのだ。すなわち、森秋先生は「今度こそ負けぬ!」とムキになっているのである。
だから歩鳥を無視できず、それどころか彼女の一挙手一投足に過剰なほど大げさに反応してしまうのだろう。
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(担当:三葉)