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しみじみとした「ほろ苦いエンディング」を描きたい!!|『男はつらいよ』(シリーズ第1作)に学ぶテクニック

名作映画を研究して、創作に活かそう!

本記事では、「男はつらいよ」(シリーズ第1作)に【「ほろ苦いエンディング」の描き方】を学びます。

※「男はつらいよ」(シリーズ第1作)については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。

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3つの物語


本作は、

・1:寅次郎の恋物語

・2:さくらと博の恋物語

・3:博と両親の再会の物語

……の3つの物語から構成されています。


赤く着色した部分にご注目ください。

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また、「寅次郎の恋物語」が他2つの物語を挟み込む【サンドイッチ状の構造】になっているのが本作の特徴です。


赤く着色した部分にご注目ください。

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さて以上を踏まえて……ここからは、3つの物語それぞれの「結末」に注目してみましょう。


【1】寅次郎の恋物語


まずは、「寅次郎の恋物語」


赤く着色した部分にご注目ください。

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<1>

物語前半、寅次郎は幼なじみの冬子と偶然再会し、恋に落ちます。

その後、2人の距離は接近。公園のボートに乗ったり、一緒に酒を飲んだり……寅次郎はハッピーな毎日を過ごす。


<2>

ところが終盤、冬子に婚約者がいたことが明らかになる!そう、寅次郎は告白することすらなく、失恋してしまったのです。

寅次郎はガックリ。彼は行く当てのない旅に出た……。


つまり、「寅次郎の恋物語」の結末はバッドエンドです。


【2】さくらと博の恋物語


続いて、「さくらと博の恋物語」


赤く着色した部分にご注目ください。

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<1>

博は、工場で働く真面目な青年です。

彼は、寅次郎の妹・さくらに恋心を抱いていました。

しかし、博は奥手です。さくらと交際し、結婚したいが……とてもじゃないが、愛の告白だなんてできそうにない!遠くから見つめたり、偶然を装って声をかけたりするのが精一杯。

そんな片想いが3年間(!)も続いていました。


まるで思春期の中学生ですよね。

傍から見ている分には、博は初心で好感が持てる。しかし、本人は辛い。まさに、さくらに恋い焦がれていました。


一方のさくら。

彼女は、博に好意を抱いています。

しかし、自分の気持ちが「恋」だとは気づいていません。おそらく彼女は、「博 = 気のいいご近所さん」くらいに認識しているのでしょう。


果たして2人の関係はどうなるのか?

まぁ、博は奥手ですからねぇ……。

しかも、さくらは超優秀。大企業で働き、上司からは素晴らしい縁談を持ちかけられている。

多くの鑑賞者は、「博はいいヤツだが……2人が結ばれることはないだろうなぁ」と感じるはずです。


<2>

ところが、そこに1人の男がやってきた。

そう、寅次郎です。彼が20年ぶりに帰郷したのです。

かくして、物語が大きく動き始めます。


当初寅次郎は、博やその同僚がさくらと親しくしているのを見て激昂しました。

「気安いぞ、この野郎!!」「うちの妹は、大学出のサラリーマンと結婚させるんだい!テメェらみたいなナッパ服職工には高嶺の花だい!」……なんて具合です。


<3>

しかしその後、博が本気でさくらに恋をしていると知り、寅次郎は態度を一変させる。

というのも、寅次郎はお節介焼きな男。その上子どもっぽく、すぐ調子に乗る。

ゆえに寅次郎は鷹揚に頷いた「よぉし、オレに任せておけ!」。


こうして寅次郎は、博のために動き始めました。女性を口説くコツを指南したり、さくらが博をどう想っているか調べたり……。

ところが、彼は粗忽者。やること為すことどうにもズレている。

善意で動いているものの、大きなトラブルを巻き起こし、さくら博が迷惑を被ることになります。


<4>

しかし、結果的にはそのトラブルがよかった。

トラブルをきっかけとして博が意を決し、さくらに愛を告白したのです。

一方のさくら。彼女は博の言葉を受け、「私は博さんを愛していたんだわ!」と自分の気持ちを理解する。

かくして2人は結ばれました。その後彼らは結婚式をあげ、物語の最後には赤ん坊を授かっています。


つまり、「さくらと博の恋物語」の結末はハッピーエンドです。


【3】博と両親の再会の物語


最後に、「博と両親の再会の物語」


赤く着色した部分にご注目ください。

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博は、8年前に両親(特に父)と喧嘩別れ。それ以来めっきり疎遠になっていました。ゆえに、さくらとの結婚式に両親が参列することはないと思っていた。

しかし、博の両親はわざわざ北海道から上京してきました


博は両親の顔を見て、態度を硬化させる。

彼は吐き捨てるように言った「息子の結婚式に出ないと世間体が悪いから、参列しただけさ!」「いまさらオヤジ面してほしくなんかない!」。


ところが博の父は皆の前で涙を浮かべて、「自分たちは親失格だ。恥ずかしい」と語った。

それを聞き、博は咽び泣きました。まさか父がそんなことを想っていたとは……!


その後彼らがどうなったのか、作中では語られていません。

ただし多くの鑑賞者は、「おそらく親子関係は修復され始めたのだろう」と感じるはずです。


つまり、「博と両親の再会の物語」の結末はハッピーエンドですね。


【まとめ①】寅次郎だけがバッドエンド


以上、本作を構成する「3つの物語」の結末を整理してきました。

・1:寅次郎の恋物語 → バッドエンド

2:さくらと博の恋物語 → ハッピーエンド

・3:博と両親の再会の物語 → ハッピーエンド


つまり、寅次郎だけがバッドエンドを迎えているわけですね。


【まとめ②】「ほろ苦いエンディング」とは何か?


さて、ここでご注目いただきたいのは、「バッドエンド + ハッピーエンド + ハッピーエンド」というバランスです。

これが絶妙だと思うんですよ!


<1>

というのも……多くの鑑賞者はハッピーエンドを望んでいます。

「いろいろあったけれど、よかったね♥」で物語が終わり、幸せな気分に浸りたいと考えるのが多数派です。


しかしその一方で、完全無欠のハッピーエンド、諸手をあげて万々歳といった結末には、「ちょっとなぁ」「なんか白けちゃうよなぁ」と不満を感じる人も少なくないでしょう。


<2>

カール・イグレシアス(Karl Iglesias/アメリカの脚本家、脚本研究家)は、「物語の結末」を5つのタイプに整理しています。

・1:ハッピーエンド(Happy Ending)

・2:バッドエンド(Tragic Ending)

・3:ほろ苦いエンディング(Bittersweet Ending)

・4:意外性のあるエンディング(Twist Ending)

・5:鑑賞者が想像を膨らませる余地を残いたオープン・エンド形式のエンディング(Open-ended Ending)


※参考:Karl Iglesias "Writing for emotional impact : advanced dramatic techniques to attract, engage, and fascinate the reader from beginning to end"



そしてこの内、「ほろ苦いエンディング」について以下のように言っています。

ホロ苦い幕切れを腑に落ちるように書くのは簡単ではないが、何かを勝ち取る代わりに何かを失うのが人生というものなので、このエンディングは高い満足を与えてくれる。『カサブランカ』、『E.T.』、『ゴッドファーザー』、『羊たちの沈黙』、『カッコーの巣の上で』、『ローマの休日』、『テルマ&ルイーズ』等が良い見本だ。

※引用元:カール・イグレシアス「『感情』から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方」(フィルムアート社)


<3>

本作はコメディ作品です。

しかし……何と言うか、こう……胸に迫るものがある。鑑賞後、しみじみとした気持ちになる。「あー、見てよかった」と思う。


一体なぜか?

ズバリ、本作が「バッドエンド + ハッピーエンド + ハッピーエンド」という「ほろ苦いエンディング」を採用しているからでしょう。


「鑑賞後・読後、しみじみとした気分になる物語」を作りたい時には、本作のような「ほろ苦いエンディング」を採用するとよさそうです。

みなさん、ぜひ試してみてくださいねー!


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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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