倒置法を使って、「AではなくてBか!」という驚きを生み出す ~アニメ「ラーメン赤猫」の場合
◆概要
【倒置法を使って、「AではなくてBか!」という驚きを生み出す】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:アニメ「ラーメン赤猫」(第2話)
▶1
本作の主人公は、珠子(若い女性)。
彼女は、猫たち(+虎1匹)が運営するラーメン店「ラーメン赤猫」で働くたった1人の人間の従業員である。
いろいろあってある日、
・Step1:「ラーメン赤猫」に迷惑配信者がやってきた。
・Step2:彼は「店内撮影禁止」という張り紙を無視して、店内でも生配信を続けた。
・Step3:従業員の猫たちは慌てる「ちょっ、うちは撮影禁止っす!」。
・Step4:しかし配信者は「撮影じゃなくて配信なんすよ!」「宣伝に協力するんでいいっすよね?」とか何とか屁理屈をこねて、一向に配信をやめようとしない。
間もなく、
・Step5:控室にいた珠子が立ち上がった。彼女は同僚の佐々木に言った「佐々木さん、警察呼んでください……念のために。私が行ってやめさせます」。
・Step6:佐々木たちは驚く。えっ。いつも気弱で臆病な珠子が!?
・Step7:珠子曰く、ああいう輩は派手な映像を求めている。猫や虎が慌てたり怒ったりすればするほど喜び、図に乗るだろう。だから私が行ってみます……!
▶2
ご注目いただきたいのは、「佐々木さん、警察呼んでください……念のために。私が行ってやめさせます」という珠子のセリフである。
要するに「私が行ってやめさせます。念のために警察も呼んでおいてください」というわけだが――ストレートにそう言ってしまっては面白くない。
そこで【倒置法を使って、「AではなくてBか!」という驚きを生み出す】という技法の出番だ。
改めて珠子のセリフをご覧いただきたい。
彼女はまず「佐々木さん、警察呼んでください」と言った。
多くの鑑賞者は「なるほど。警察の力を借りて解決しようというわけだな。妥当な判断だ」と思ったことだろう。
しかし、違った。そうではなかった。
彼女は続けた。曰く「……念のために。私が行ってやめさせます」。つまり警察を呼ぶのは「念のため」であり、彼女は自分が「行ってやめさせる」と言っていたのだ。
「えっ!警察に頼るんじゃなかったの!?お前が自分で行くの!?」と驚き、ぐぐっと物語に引き込まれた鑑賞者は少なくないはずだ。そう、上記技法を採用したことで、印象的で魅力的なシーンになったといえるだろう。