「わかりきったこと・言うまでもないこと」を敢えて指摘して、相手を笑わせたり、その場の雰囲気をほぐしたりする ~映画「マイ・インターン」の場合
◆概要
【「わかりきったこと・言うまでもないこと」を敢えて指摘して、相手を笑わせたり、その場の雰囲気をほぐしたりする】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「マイ・インターン」
▶1
本作の主人公はベン(70代の男性)。
彼はすでに仕事を引退している。妻とは死別した。かくしていま、退屈な毎日をすごしていた――。
そんなある日のことだ。
・Step1:ベンは、とあるベンチャー企業がシニアのインターンを募集していると知った。
・Step2:彼は早速応募してみた。
で、面接。
・Step3:面接官は20代と思しき女性だ。
・Step4:面接官は訊いた「出身大学はどちら?」。
・Step5:ベンが答える「ノースウェスタン大学です」。
・Step6:すると面接官は笑顔になって「えっ、本当に!?私の兄もノースウェスタン大学よ」。
・Step7:ベンは微笑んで「ほぉ。ただ、たぶん同級生ではないかな」。
・Step8:その言葉に面接官も微笑む「そうね。だって兄は2009年卒だから」。
・Step9:ベンが言う「私は1965年卒です」。
▶2
ご注目いただきたいのは、「ほぉ。ただ、たぶん同級生ではないかな」というベンのセリフである。
上述の通りベンは70代。大学を卒業した後は某企業に就職し、それからずっと働いていた。一方、面接官の兄は20-30代だろう。
というわけで、2人がノースウェスタン大学に通っていた時期は50年くらいはズレていると推測できる。一方、2人が同級生だった可能性はゼロ。言うまでもないことだ。
――が、ベンはわざわざ「ほぉ。ただ、たぶん同級生ではないかな」と指摘した。
なぜか。
場の雰囲気をほぐすためだ。
つまりこれは、【「わかりきったこと・言うまでもないこと」を敢えて指摘して、相手を笑わせたり、その場の雰囲気をほぐしたりする】という技法である。
この技法を使ったことで、「えっ、お兄さんもノースウェスタン大学ですか。これは奇遇ですね!」なんてまじめに応じるのと比べて、ぐっと面白くてユニークなセリフになったといえるだろう。
また、ベンがユーモアセンスを持ち合わせた気さくな人物であることがよく伝わってくるようになった。