メインメッセージの後に「些細な例外」を付け足すことで、相手を笑わせたり、その場の雰囲気をほぐしたりする ~映画「ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-」の場合
◆概要
【メインメッセージの後に「些細な例外」を付け足すことで、相手を笑わせたり、その場の雰囲気をほぐしたりする】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-」
▶1
本作の主人公はニコラス(30代頃の男性)。
彼はエリート警察官である。大変な腕利きで、しかもまじめ。
で、あまりにも優秀でまじめなため上司や同僚から疎まれ、ついに田舎町に左遷されてしまった。
とはいえ、
・Step1:ニコラスは変わらない。相変わらず優秀でまじめ。かくして彼は田舎町の警察署にも馴染めずにいた。
・Step2:だが、ダニー巡査だけは違う。彼はニコラスを厭うことなく、親しく語りかけてくれた。
・Step3:その甲斐あって、ニコラスもダニー巡査には心を開くようになった。
そしてある日、
・Step4:2人がパブで酒を飲んでいた時のことだ。
・Step5:ダニー巡査が訊いた「なんでデカになろうと思ったの?」。
・Step6:ニコラスは言った「というより、なりたくないと思ったことがないんだ。――79年の夏だけはカエルのカーミットになりたかったけど」。
・Step7:ダニー巡査が笑う。
※補足:「カエルのカーミット」は、人形劇バラエティ番組「マペット・ショー」に登場するキャラのこと。1979年頃、イギリスでは同番組が流行っていたらしい。幼少期のニコラスもまたこの番組に夢中になっていたのだろう。日本でいえば「幼い頃は孫悟空になりたかった」「セーラームーンになりたかった」というのと同じである。
・Step8:その後、2人はジョークを飛ばしながらお互いの身の上を語り合い、酒を飲みまくった。
▶2
ご注目いただきたいのは、「というより、なりたくないと思ったことがないんだ。――79年の夏だけはカエルのカーミットになりたかったけど」というニコラスのセリフである。
要するに「幼い頃からずっと警察官になりたかったんだ」という意味だが――ストレートにそう言ってしまっては面白くない。
そこで【メインメッセージの後に「些細な例外」を付け足すことで、相手を笑わせたり、その場の雰囲気をほぐしたりする】という技法の出番だ。
改めてニコラスのセリフをご覧いただきたい。
彼は「というより、なりたくないと思ったことがないんだ」というメインメッセージの後に、「――79年の夏だけはカエルのカーミットになりたかったけど」と【些細な例外】を付け足した。
その結果、いかにも酒を飲みながらの会話っぽい雰囲気が出た。また、見ていて楽しい愉快なシーンになったといえるだろう。