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格好いいこと・しゃれたことを言った人を、からかったり皮肉ったりする(「いまのは○○のパクりかい?」というふうに発言それ自体をネタにするver.) ~ドラマ「After Life/アフター・ライフ」の場合

アン「(トニーを激励する)神様なんてばかげているわ。人間には人間しかいないの。お互いに助け合って何とか生きていくしかない」

トニー「(まじめな表情で)あんたは電話相談員になりたいのかい?」
アン「もう!」

ドラマ「After Life/アフター・ライフ」(第4話)




◆概要

【格好いいこと・しゃれたことを言った人を、からかったり皮肉ったりする(「いまのは○○のパクりかい?」というふうに発言それ自体をネタにするver.)】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。


◆事例研究

◇事例:ドラマ「After Life/アフター・ライフ」(第4話)

▶1

本作の主人公はトニー(中年男性)。

彼は愛する妻をがんで亡くし、そのショックから立ち上がれないでいた。いまやすっかり荒んだ生活を送っている。自殺も考えている。


ある日、

・Step1:トニーがアン(知り合いの高齢女性)と話していた時のことだ。

・Step2:アンは、トニーを激励してくれた。曰く「神様なんてばかげているわ。人間には人間しかいないの。お互いに助け合って何とか生きていくしかない」。


アンの言葉に対し、

・Step3:トニーはまじめな表情で訊いた「あんたは電話相談員になりたいのかい?」

・Step4:アンは茶化すんじゃありませんという感じで「もう!」。

・Step5:トニーはニヤッと笑う。

・Step6:アンは続けた「私が言いたいのはね、あなたは心の底では『人生には生きる価値がある』とまだ思っているってことよ。人生は長いわ。……苦しいわね。でも失ったものと同じもので、その苦しみを止められる」。

・Step7:トニーは真剣な表情でうなずいた


▶2

ご注目いただきたいのは、「あんたは電話相談員になりたいのかい?」というトニーのセリフである。

要するに彼は、素敵な言葉で励ましてくれるアンをからかっているわけだが――これがいいと思うのだ。

第1に、トニーがユーモアセンスを持ち合わせた魅力的な人物だと伝わってくる。多くの鑑賞者は主人公が魅力的だからこそその作品を見続けるのであり、したがって主人公トニーの魅力をアピールするのは極めて重要なことだ。

第2に、シーンが明るくなる。本作は「妻に先立たれた中年男性のその後の人生」を描いており、一歩間違えると過剰に重苦しくなってしまう。だからこそ意識的に明るくしてやる必要がある。

第3に、「作中キャラが励まされるシーン」は鑑賞者からすれば特段面白いものではなく(批判されたり非難されたりするシーンの方が100倍面白い)、したがってだらだら引き延ばすのはよくない。手早く終わらせるべきだ。軽いジョークで処理したことで、テンポよく次のシーンに進めたといえるだろう。


なお、トニーはアンをからかうが、しかしそのすぐ後に真剣な表情でうなずき(上記Step7)、彼女の言葉を受け入れたことが伝わってくる。これも重要だ。だってもしもからかうばかりなら、せっかく励ましてくれた友人をからかうだけの胸糞悪い野郎になってしまう。


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