物や動物について「○○だね」と言った人に対して、「向こうもそう思っているよ」と応じる ~映画「ジーサンズ はじめての強盗」の場合
◆概要
【物や動物について「○○だね」と言った人に対して、「向こうもそう思っているよ」と応じる】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「ジーサンズ はじめての強盗」
▶1
本作の主要キャラの1人・アルバート(80代男性)。
彼はサックスの名手であり、
・Step1:エズラという少年の家庭教師をしていた。
・Step2:ところが、エズラ少年はいつまで経っても上達しない。それどころか練習すればするほど下手になっていく!
・Step3:アルバートは頭を抱えた。
というわけである日の練習中、
・Step4:アルバートははっきりと言った「これ以上聞いていられない」「もうサックスは止めた方がいい」「止めても問題ないだろ?きみは才能がないし、上手くなる意欲もなければプロになりたいわけでもないようだし」。
・Step5:するとエズラ少年が告白した「じつはサックスは元々好きじゃないんだ」(祖母に強要されていただけで、エズラ少年自身がサックスを習いたかったわけではないらしい)。
・Step6:アルバートはうなずいた「そうかい。サックスもお前のことは好きじゃないだろうよ」「じゃあ練習は今日で止めよう。それがお前のためだよ」。
▶2
ご注目いただきたいのは、「そうかい。サックスもお前のことは好きじゃないだろうよ」というアルバートのセリフである。
このセリフは必要不可欠なものではない。これをカットして、いきなり「じゃあ練習は今日で止めよう。それがお前のためだよ」と応じても何も問題ないわけだが――しかしそれでは面白みを欠く。
そこで【物や動物について「○○だね」と言った人に対して、「向こうもそう思っているよ」と応じる】という技法の出番だ。「そうかい。サックスもお前のことは好きじゃないだろうよ」という一言を挟んだことで、ウィットに富んだやりとりになったといえるだろう。