クソでファックなヒロインの作り方
ガラの悪いヒロイン
三葉「ちょっと聞いてくれます?」
清水「何でしょう?」
三葉「私、ガラの悪い女の子が好きなんですよ」
清水「……ん?」
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登場人物紹介
・清水:マスター・オブ・アニメ。年100作以上のアニメを見続けて20余年。ジブリ作品で最も好きなのは「On Your Mark」。
・三葉:清水とは中学からの友人。最近ハマっている曲は『Kanon』の「Last regrets」。2019年6月4日は、あの伝説のPCゲーム「Kanon」発売から20周年でしたね!祝!
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三葉「例えば、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』に『来栖加奈子』っていうヒロインが出てくるんですけど……」
清水「えーと……どんなキャラでしたっけ?」
三葉「自分勝手で、乱暴者で、言葉づかいは最悪。お世辞にも知的とは言えないタイプ。素行不良ゆえか両親とは不仲で、姉と暮らしている。……しかし夢はアイドルで、そのためなら努力を惜しまない。また、男気があり、精神的にタフ……っていうあのキャラですよ!」
清水「あー!あの子か!」
三葉「中学生ながら喫煙者で」
清水「そうだ、そうだ!」
三葉「でね」
清水「ええ」
三葉「いつか私がハーレム作品を作るとして、加奈子のようなガラの悪いヒロインを登場させたいなぁと思うんですよ」
清水「アハハ!なるほど!楽しいですよねぇ、そういう妄想って」
三葉「いや、妄想ではなくて真剣に考えてるんですけどね」
清水「……失礼」
三葉「で、そんなガラの悪い子ですから、『ガラの悪さがにじみ出るようなセリフ』を言わせたいじゃないですか」
清水「ふーむ……まぁね」
三葉「ってことで、今日は『ガラの悪いヒロインにぴったりのセリフ』を考えたいと思うのです!」
清水「ほぉ」
三葉「今後、『ガラの悪いヒロイン』を創作・制作しようというクリエイターの方のご参考になれば幸いです」
清水「……ニッチすぎない?」
「ガラの悪いヒロイン」らしいセリフって何だろう?
三葉「さて、『どんなセリフがそれっぽいかなぁ』『何か参考になるものはないかなぁ』と考えてみたんですが……」
清水「加奈子のセリフは参考になりませんか?」
三葉「いや、もっとガラの悪いキャラにしたいんですよ」
清水「……ん?」
三葉「加奈子はバカでひねくれ者ではありますが、なんだかんだ言って育ちがよさそうでしょ?」
清水「ああ、確かにそんな雰囲気はありますね」
三葉「もっと育ちの悪そうな子がよいんですよ!」
清水「(好みは人それぞれだからなぁ……)」
三葉「でまぁ、アレコレ思案しまして」
清水「ふむ」
三葉「そこで思いついたのが……タランティーノ監督!」
※クエンティン・タランティーノ:アメリカの映画監督、脚本家。監督としては、92年に『レザボア・ドッグス』でデビュー。その後も、『パルプ・フィクション』、『キル・ビル』シリーズ、『イングロリアス・バスターズ』など、傑作を連発している。
三葉「私、タランティーノ作品の大ファンなんですが……」
清水「ええ」
三葉「彼が監督・脚本を担当した作品では、登場人物がやたら『ファック(fuck、fucking)』を連発する傾向があるんですよ」
清水「ほぉ」
三葉「例えば、監督デビュー作品『レザボア・ドッグス』には、『ファック』という単語が259回も登場するそうです」
清水「へぇ……」
三葉「あるいは、『Thank you very much(サンキュー・ベリー・マッチ)』の代わりに、『Fuck you very much(ファッキュー・ベリー・マッチ)』って言ったりね」
清水「すげぇな」
三葉「最高ですよ!」
清水「ふーむ……」
三葉「でね、私の考える『ガラの悪いヒロイン』にも、『ファック』のようなセリフを言わせたいなぁと思いまして」
清水「なるほど」
三葉「そこで、侮蔑語・罵倒語・差別語について調べてみました」
清水「何か使えそうな言葉は見つかりましたか?」
三葉「一応いろいろ見つかったんですが……どうもピンと来ないんですよねぇ、これが」
清水「ほぉ……どういうことです?」
三葉「例えば、タランティーノ作品では、『ファック』同様、『ニガー(nigger)』という単語がたびたび登場します」
清水「『ニガー』ですか……」
三葉「『ニガー』は一概に侮蔑語というわけではないようですが……少なくとも、『非黒人が黒人に対して使った場合には、侮蔑的な意味が込められていることが多い』そうです」
清水「ふむ」
三葉「はてさて、それでは我らがヒロインが黒人を侮蔑することにしましょう。何と言うべきか?」
清水「んー……黒人を侮蔑する日本語……」
三葉「辞書によるとね」
清水「ええ」
三葉「『くろんぼ』らしいんですよ」
清水「あー、確かに聞いたことがありますね」
三葉「そうなんですが……どう思います?現代を舞台にした作品で、ガラの悪いキャラが『くろんぼ』なんて言いますかね?違和感を覚えません?」
清水「あー」
三葉「『くろんぼ』はないでしょ、『くろんぼ』は」
清水「確かに時代がかった響きがありますね。令和の作品とは思えないかなぁ」
三葉「あるいは、イタリア人を侮辱してみましょう」
清水「イタリア人を侮辱する日本語……」
三葉「これまた辞書を見ると……『イタ公』ですよ!」
清水「なるほど」
三葉「現代の不良が『おい、イタ公!』なんて言うと思います?言わないでしょ!せいぜい『パスタ野郎』とかその程度でしょ?」
清水「いや、それも言わないと思いますけどね……」
「クソ」と「ファック」を使いこなそう!
清水「まぁ、『くろんぼ』にしろ、『イタ公』にしろ、現代風な言葉ではないのはわかりました」
三葉「そうなんですよ。そんな非日常的な言葉を使いこなしていたら、むしろ、なんだか知的な雰囲気すら漂ってくるでしょ?」
清水「んー、なるほど。古い本や映画に詳しいサブカルキャラっぽいかな」
三葉「ラッパーじゃないんですから、凝ったセリフはいらないんですよ。というかね」
清水「ええ」
三葉「語彙貧弱な方がよいと思うんですよ。その方が頭も育ちも、そしてガラも悪そうでしょ?」
清水「まぁ、確かに」
三葉「ってことで……結論!」
清水「ふむ」
三葉「『クソ』ですよ、『クソ』!『クソ』を連発すればよいんですよ!」
清水「あー……」
三葉「『クソ』ってのは、現代でも日常的に使われていますよね。『クソオヤジ』とか『クソババア』、あるいは『クソみてぇなツラしやがって』とか」
清水「確かに、現代を舞台にした作品に『クソ』と言うキャラがいても違和感はありませんね」
三葉「そこが、『くろんぼ』や『イタ公』とは違う!」
清水「ふむ」
三葉「基本的に『クソ』の連発でよいと思うんですが……口直しの表現も容易しておきたい」
清水「口直し?」
三葉「『醤油ラーメンが好きだけど、たまには味噌もよいよね』みたいな」
清水「あー」
三葉「そんな時にはね、もう『ファック』って言っちゃえばいいと思うんですよ」
清水「ほぉ」
三葉「ガラの悪いキャラですよ。『バカ』や『アホ』よりも、『ファック』と言う方がよほどしっくりくると思いません?」
清水「まぁ、『バカ』だの『アホ』だのは、子どもっぽいというか、ギャグっぽさが出ちゃうかもしれませんね」
三葉「そうそう!それに対して、『ファック!』というセリフを流れるように口にするキャラ……超ストリート感があるでしょ?」
清水「ふーむ……」
三葉「ということでね、『クソ』と『ファック』を連発する女の子にしようと思うんですけど、どう思います?」
清水「いや、どうと言われても……」
三葉「例えば……『走れメロス』ってあるじゃないですか」
清水「ええ、太宰治の短編小説ですね。セリヌンティウスが云々っていう」
三葉「そうそう。あの小説の冒頭部分をそれっぽく書き換えてみたんですよ」
清水「ほぉ……面白そうだ」
三葉「まずは原文」
<原文>
メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。
※青空文庫から引用。
清水「ふむふむ。こんな出だしでしたね」
三葉「そして、これをクソ化すると……」
清水「クソ化って……」
<クソ化>
メロスはクソ激怒した。ファック。必ず、かのクソでファッキンな邪智暴虐のクソ王を除かねばならぬと決意した。ファック。クソメロスには政治がわからぬ。ファック。メロスは、クソみたいな村のクソみたいな牧人である。クソみたいな笛を吹き、クソみたいな羊と遊んでファックに暮らして来た。
三葉「どうです!」
清水「……」
三葉「『クソ』と『ファック』を連発することで、ガラの悪さ、育ちの悪さがにじみ出したきたでしょ?」
清水「まぁ……確かに迫力はありますが……」
三葉「これぞ『ガラの悪いキャラ』って感じですよねぇ!」
清水「……これ、女の子なんですよね?」
三葉「女の子ですよ。ハーレムものに登場するヒロインです」
清水「なるほど……」
三葉「ツンデレってありますよね」
清水「ええ」
三葉「彼女もツンデレでしてね。次第にデレデレしてくるわけですよ」
清水「あー、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の加奈子もそんな感じでしたね」
三葉「照れながら、『テ、テメェのことなんかクソとも思ってねぇよ!クソが!勘違いすんな、ファック!』なんてね」
清水「ふーむ……『ポプテピピック』のポプ子みたいな感じですかね?」
三葉「いや、アレはギャグじゃないですか!こっちは、『Kanon』にヒロインを追加するならどんな子がよいかって話をしてるんですよ!」
清水「ふーむ……」
三葉「いくつかエピソードも考えてみました」
清水「ほぉ……伺いましょう」
【クソでファックなヒロインのエピソード案①】嬉しい時も、褒める時も「クソッ!」
三葉「『クソ旨いな、コレ』とか、『クッ、クソカッコいいんじゃね?』とか、あるいは『クッ、クソ好きだって言ってんだよ!ファック!』とか、まぁそんな具合ですね。ポジティブな時にも『クソ』や『ファック』を連発することで、視聴者に対してガラの悪さをアピールしていきたいですね」
清水「ふむ……」
【クソでファックなヒロインのエピソード案②】敵にぶん殴られた時、「痛ッ!」ではなく「ファック!」と叫ぶ
三葉「ガラの悪い子ですからね。まぁ、喧嘩することもあるでしょう」
清水「ふむ」
三葉「そんな時にね、反射的に『ファック』という単語が飛び出すわけですよ。『クソ』だの『ファック』だのという言葉が、いかに彼女の体に染みついているかがよくわかるエピソードでしょ?」
清水「なるほど……」
【クソでファックなヒロインのエピソード案③】自分も日本人なのに「ファッキン・ジャップ!」と言う
清水「……ん?」
三葉「きっと、金曜ロードショーあたりで北野武監督作でも見たんでしょうね。相手に向かって『ファッキン・ジャップ!』と言ってしまう」
清水「当然相手は、『お前も日本人だろ!』とツッコむでしょうね……」
三葉「彼女は叫ぶ……『屁理屈こねてないでかかってこいや!ファック!口喧嘩しにきたのかよ!』」
清水「屁理屈じゃなくて正論ですよね……」
三葉「まぁ、彼女は頭の悪い子ですから!」
清水「……」
三葉「かわいいでしょ?」
清水「……やっぱりギャグでしょ?」
三葉「いえ、純愛ものですよ」
参考文献
本記事を執筆するにあたり、山崎智之氏の考察「タランティーノ式英会話講座」(以下のムックのP93~95に収録)を参照しました。
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(担当:三葉)
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