「発言中のキャラの目を意図的に隠す」という演出によって、そのキャラが本音を話していないことを暗示する ~アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Road to the Top」の場合
◆概要
【「発言中のキャラの目を意図的に隠す」という演出によって、そのキャラが本音を話していないことを暗示する】は「キャラの感情などを暗示する」ためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Road to the Top」(第3話)
▶1
本作の主人公は、ナリタトップロード。
ウマ娘育成校「トレセン学園」に在籍する若きウマ娘だ。
いろいろあって第3話、
・Step1:スランプに陥ってしまったナリタトップロード。
・Step2:彼女はまじめな努力家だ。また、多くの人から愛されている。そしてそれがゆえに、「皆の期待に応えなければ」という強迫観念のような強い気持ちを抱き、かくしていま自分を追い詰めるに至っていた。「もう負けるわけにはいかない!」「もしまた負けてしまったら、誰も私を応援してくれなくなってしまうだろう。それは嫌だ!」というわけだ。
第3話終盤、
・Step3:ナリタトップロードがトレーナーに向かって「私はもう大丈夫です!」と語るシーンがある。
・Step4:しかしトレーナーは「……本当か?」。
・Step5:するとナリタトップロードは明るい口調で「だって、そうじゃないとダメでしょ?皆、次は勝てるって期待して応援してくれるんです。なのに……肝心の私がずっと落ち込んでるわけにはいきませんよ。だからもう大丈夫なんです、私は!」。
▶2
ご注目いただきたいのは、Step5である。
上述の通り、ナリタトップロードの口調は明るい。声色だけで判断するならば、彼女はすっかり立ち直ったように思える。
ところがこのシーンには違和感があって、すなわちナリタトップロードの目が終始画面に映らないのだ。
・【映像1】「だって、そうじゃないとダメでしょ?」と言う時:ナリタトップロードは画面に背中を向けている。つまり、私たち鑑賞者には彼女の背中や後頭部しか見えない。
・【映像2】「皆、次は勝てるって期待して応援してくれるんです」と言う時:画面には、ナリタトップロードの膝から下しか映っていない。
・【映像3】「なのに……肝心の私がずっと落ち込んでるわけにはいきませんよと言う時:画面には、ナリタトップロードの鼻から胸の辺りまでしか映っていない。
・【映像4】「だからもう大丈夫なんです、私は!」と言う時:ナリタトップロードはまたもや画面に背中を向けており、私たち鑑賞者には彼女の背中や後頭部しか見えない。
発言中のキャラの目が映らない、というかあからさまに隠されている……異常である。
「目は口ほどに物を言う」ということわざがあるように、目は真実を語る器官だ。それが隠されている。つまり「真実を語っていないこと」の暗示だ。
ナリタトップロードは「大丈夫です!」と語るが、実際にはちっとも大丈夫ではない。本当はいまにも泣き出してしまいそうなほど追い詰められているのだ。
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