「ノー」と言う代わりに、「お前は○○だと思っているのか?」と皮肉っぽく質問を投げかける ~映画「アナライズ・ユー」の場合
◆概要
【「ノー」と言う代わりに、「お前は○○だと思っているのか?」と皮肉っぽく質問を投げかける】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「アナライズ・ユー」
▶1
本作の主人公はベン(50歳頃の男性)。
彼は、善良な一般市民である。
ところがひょんなことから、ポール(巨大マフィアの大ボス!)と縁ができてしまった。
しかも――ある日のことだ。
・Step1:いろいろあって、ベンは危険極まりない金塊強奪作戦に参加することになってしまった。
・Step2:ベンは怯える。
・Step3:一方、ポールは呆れる。お前何やってんだよ……。
・Step4:そう、ポールはベンの参加を望んでいない。ど素人が参加するメリットなんてないのだ。だが、作戦開始時刻が迫っている。いまさらベンを家に帰してやる余裕はない。
というわけで、
・Step5:ジェリー(ポールの側近)がベンに指示した「防弾チョッキを着ろ」。
・Step6:ところが、小柄なベンに合いそうなものは見当たらない。ベンは訊いた「もっと小さいサイズはないかな?」。
・Step7:ジェリーは呆れて「お前はここがブルーミングデール(Bloomingdale's)だと思ってるのか?」。
※補足:「ブルーミングデール(Bloomingdale's)」はアメリカの有名デパートの名前。
▶2
ご注目いただきたいのは、「お前はここがブルーミングデールだと思ってるのか?」というジェリーのセリフである。
要するに、ベンの問いかけに対して「ノー。小さいサイズはない」と答えたわけだが――ストレートにそう言ってしまっては何も面白くない。
そこで【「ノー」と言う代わりに、「お前は○○だと思っているのか?」と皮肉っぽく質問を投げかける】という技法の出番だ。
改めてジェリーのセリフをご覧いただきたい。「お前はここがブルーミングデールだと思ってるのか?」。
現代日本に置き換えるならば「もしかしてお前、ここがユニクロだと思っていないか?」「イオンか何かと勘違いしていないか?」というふうになるだろう。
「ここはブルーミングデール(ユニクロ、イオン)ではない。マフィアのたまり場だ。自分にぴったりのサイズがあるなんて思うなよな。何でもいいからさっさと着けろ!」という意味である。
「ノー。小さいサイズはない」を「お前はここがブルーミングデールだと思ってるのか?」と言い換えたことで、いい具合に皮肉っぽくて面白いセリフになったといえるだろう。