「A、B、C」と列挙することで、メインメッセージを強調する ~映画「シカゴ7裁判」の場合
◆概要
【「A、B、C」と列挙することで、メインメッセージを強調する】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「シカゴ7裁判」
▶1
本作の主要キャラの1人・ボビー(黒人、30代の男性)。
彼は、黒人の権利のために戦う政治団体「ブラックパンサー党」のリーダーである。
1968年のある日のことだ。
・Step1:ボビーが言った「必要とあらば、俺は警官をぶちのめすことも辞さない!」「それぐらいしないと世の中は変わらない!」。
・Step2:話を聞き、仲間は慌てた。そんなことをしたら逮捕され、黒人にとって不利な差別的な裁判を受けることになるぞ!ここは穏便に、平和的に活動するべきだ!
・Step3:仲間の1人がボビーを説得しようとして口を開いた「キング牧師は……」。――「キング牧師は暴力に反対していた。それを忘れてはいけない」と言おうとしたのだろう。
・Step4:ところがボビーはその言葉を遮って、「キング牧師はもう死んだ!彼は夢を持っていたが頭をぶち抜かれちまったんだ。マルコム・Xもボビー・ケネディもそうだ。キリストもな。彼らは皆、非暴力を訴えていた。――だから俺たちは手法を変えるんだ」。
▶2
ご注目いただきたいのは、「キング牧師はもう死んだ!彼は夢を持っていたが頭をぶち抜かれちまったんだ。マルコム・Xもボビー・ケネディもそうだ。キリストもな。彼らは皆、非暴力を訴えていた。――だから俺たちは手法を変えるんだ」というボビーのセリフである。
このセリフに登場する人物、すなわちキング牧師(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)、マルコム・X、ボビー・ケネディ(ロバート・ケネディ元アメリカ合衆国上院議員)、そしてキリストは、暴力反対の立場に立ち、暴力を使わずして世界を変えようとした(※)。
だが、彼らはその途中で殺されてしまった。
そう、世界を変えるには暴力も必要なのだ!俺は暴力を使うことも辞さないぞ!――ボビーはそう主張しているのである。
※補足:マルコム・Xは、活動の初期においては暴力を使うことも辞さないと主張していた。しかしやがて非暴力の可能性も探るようになった。
要するにこれは【「A、B、C」と列挙することで、メインメッセージを強調する】という技法であり、キング牧師、マルコム・X、ボビー・ケネディ、キリストといった先人たちの名前を次々と列挙することで、ボビーは自らの主張の正しさを強調しているわけだ。