格好いいこと・しゃれたことを言った人を、からかったり皮肉ったりする(「いまのは○○のパクりかい?」というふうに発言それ自体をネタにするver.) ~ドラマ「コミンスキー・メソッド」の場合 #1
◆概要
【格好いいこと・しゃれたことを言った人を、からかったり皮肉ったりする(「いまのは○○のパクりかい?」というふうに発言それ自体をネタにするver.)】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:ドラマ「コミンスキー・メソッド」(シーズン1の第1話)
▶1
本作の主人公はサンディ(70代の男性)。
彼には少し年上の親友がいる。ノーマン(男性、おそらく80代)だ。
ある夜、
・Step1:ノーマンの妻が病院に運ばれた。彼女は末期がんに侵されており、最期の日々を自宅ですごしていたのだが……いよいよその時が来たようだ。
・Step2:連絡を受け、サンディは病院に急行した。
・Step3:しかし時すでに遅し、ノーマンの妻は亡くなっていた。
・Step4:ノーマンは、妻の遺体の傍でがっくりうなだれていた。皆が「一度帰って休んだ方がいい」と勧めるものの、しかしダメだ。彼は妻から離れたくないと言って譲らない。
というわけで、
・Step5:親友サンディの出番である。
・Step6:彼はノーマンの胸に手を当てると「お前は彼女と離れたりはしない。だって彼女はここにいる。いつもお前の心の中にいる。この先もずっとだ」。
・Step7:ノーマンはいつになく弱々しい口調で「いい言葉だな。慰められるよ。ありがとう」。
・Step8:サンディが改めて促す「さぁ帰ろう」。
・Step9:ノーマンはゆっくりと立ち上がった。……と思いきや、ぼそっと一言「ところで、いまの言葉は何かの映画からパクったのか?」。
・Step10:サンディは「さぁどうだったかな」。
▶2
ご注目いただきたいのは、「ところで、いまの言葉は何かの映画からパクったのか?」というノーマンのセリフである。
要するに彼は、心に響く素敵な言葉を口にしたサンディをからかっているわけだが――これがいいと思うのだ。
第1に、ノーマンがどれほど辛い時にもユーモアと毒舌を忘れない魅力的なキャラだと伝わってくる。ノーマンは本作の副主人公であり、そんな彼の魅力を鑑賞者にアピールするのは極めて重要なことだ。
第2に、シーンが明るくなる。「副主人公が最愛の妻を亡くして落ち込んでいるシーン」が暗いのは当たり前だが、かといって重苦しく描けばいいというものではない。延々と暗いシーンが続くと鑑賞者はしんどくなってしまう。だからこそ意識的に明るくしてやる必要がある。そこでこのからかいである。
なお、ノーマンはサンディをからかいつつも、彼の言葉にしたがって帰宅するべく立ち上がる。これも重要だ。だってもしもからかうばかりなら、せっかく励ましてくれた友人をからかうだけの胸糞悪い爺になってしまう。
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