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避難指示を無視してBBQしていたアホな若者を救助する話!!|『プライベート・ライアン』(2)

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テーマ発表!!


 前回に引き続き、映画「プライベート・ライアン」をベースに新しい物語を妄想します。

※「プライベート・ライアン」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。

嘉村 「プライベート・ライアン」は、第2次世界大戦中、理不尽にも思える任務を与えられた8人の兵士が、命がけの旅をする作品ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?


案①


三葉 まずは、「プライベート・ライアン」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


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三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて以上を踏まえて「案①」ですが……ズバリ!「調査兵団の団員が、『老兵(かつて英雄と呼ばれた男)の救出』という理不尽とも思える任務に就くが、思わぬ展開を経て、ゾンビと戦うことになる物語」です。


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嘉村 ほぉ、ゾンビものですか。

三葉 詳しくご説明しましょう。

嘉村 ふむ。

三葉 まず世界観。「プライベート・ライアン」は、第2次世界大戦中の実際にあった出来事をベースにした物語ですが……日本では、リアルな「戦争もの」っていまいち人気がないと思うんですよね。

嘉村 確かに。

三葉 そこで「案①」では、「何らかの理由でゾンビが出現してから100年ほど経った世界。人類は大きなダメージを受けていた。生き残った人びとは、あちこちに点在するシェルターの中で暮らしている。各シェルターには数百~数万人程度の人が住み、社会を形成している」……というファンタジー要素強めの世界観を採用しました。

嘉村 ふむふむ。

三葉 次に主人公は……「シェルターの外 = 人類の支配領域外」を調査する「調査兵団」の一員です。

嘉村 調査兵団!「進撃の巨人」みたいですね。


三葉 調査兵団の任務は、外の世界の調査です。具体的には、いまや廃墟と化した街を探索して使える資材を回収したり、シェルター周辺のゾンビの動向を探ったり。

嘉村 なるほど。

三葉 無論、シェルターの外での仕事は危険極まりないものですが、団員たちは「人類の未来のために!」という熱い想いに燃えている。

嘉村 ふむ。

三葉 さてそんなある日……主人公率いる「調査兵団第○○分隊」に命令が下ります。すなわち、「先日調査に出発してそのまま連絡がとれなくなった『第1分隊』を探し出し、保護せよ!」。かくして主人公とその部下7人、計8人が勇ましく旅立ちます。……が、部下らは不満タラタラ。

嘉村 と言うと……?

三葉 前述の通り、調査兵団は死と隣り合わせの仕事です。ゾンビに襲われ、いつ全滅するとも知れない。

嘉村 ええ。

三葉 これまでにも、少なからぬ団員が行方不明になってきました。しかし、救助隊が組織されるなんて前代未聞のことです。残酷なようですが……行方不明者が出たということは、その辺りにゾンビの群れがいるということ。いまの人類には、ゾンビを圧倒する力はありません。救助隊を出せば、被害が拡大する可能性が高い。そう、彼らを見捨てることしかできないのです。

嘉村 なるほど。ところが今回は救助隊が派遣された、と。

三葉 ええ、その通りです。

嘉村 そこに秘密があるわけですね。

三葉 はい。ポイントは「第1分隊」の隊長です。

嘉村 ほぉ。

三葉 半世紀前ほど前……彼らの住むシェルターが、ゾンビの大群に襲撃されたことがありました。防衛線を突破され、バリケードも破られ……このままでは全滅は必至!誰もがもうダメだと思ったその時、若き1人の兵士がゾンビの前に立ちはだかったのです。その果敢な戦いぶりは人びとを鼓舞し、やがてゾンビを追い払うことに成功します。戦いの後、人びとは彼を「英雄」と呼び、シェルターの救世主として讃えました。

嘉村 ほぉ。

三葉 それから半世紀。かつて英雄と呼ばれた男、いまはすっかり老兵となりましたが……彼こそが「第1分隊」の隊長を務めているのです。

嘉村 なるほど。

三葉 主人公らは老兵を探して歩を進めます。彼の部下が毒づく「英雄なら英雄らしく、とっとと隠居すりゃいいのによぉ。いつまでも現場にこだわって……結局オレたちの足を引っ張ってんじゃねぇか」「オレたちは調査兵団の中でも精鋭だぜ。そんなオレたちが、1人の老兵のために命を懸けるって……本当にバカみたいだよ」「っていうかさ、そもそも生きてる可能性ってどれくらいあるのかね?ゾンビに噛まれ、ゾンビ化してんじゃないの?やれやれ……」。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さらに不満が続きます「あの英雄……いや、元英雄だな。あの人はいまも人気があるからね。政府は、『あの人を見捨てたら市民から不満の声が上がるだろう。野党も騒ぐに違いない』って考えたんだろうな」「つまり、オレたちは政府の保身のために派遣されたってことか?」「選挙が近いからね。『やるだけのことはやった』って言えるだけの証拠がほしいんだと思うよ」「クソだな!」。

嘉村 そんな事情があるわけですね。

三葉 主人公は、隊長として部下を諫めますが……じつは彼自身もこの任務には疑問を抱いている。

嘉村 ほぉ。

三葉 すなわち、「あの人がいなければ、シェルターは全滅していただろう。英雄。そう、確かに英雄だ。……だが、そのかつての英雄のために、オレの部下が死ぬかもしれない。次の英雄になる可能性のある優秀な若者なのに、だ!……こんなことが許されるのだろうか?」。

嘉村 ふーむ……アレですね。ちょっといまの日本を彷彿とさせるような……。

三葉 ええ。ここでは深入りしませんが……「プライベート・ライアン」のテーマは、ざっくり言えば「たった1人の兵士のために、8人が命を懸ける……って、おかしくない!?」です。

嘉村 ふむ。

三葉 これに対して「案①」のテーマは、いまの日本が抱える大きなモヤモヤ、すなわち「若者世代が、高齢者世代の尻をぬぐう……っておかしくない!?」

嘉村 なるほど。

三葉 さて話を戻しましょう。……主人公らは不満を漏らしながらも、旅を続けます。途中、貴重なゾンビウイルスワクチンを発見したり、一部の団員がゾンビに殺され「なんて任務だ!!」とショックを受けたりしたりしながら……やがて老兵を見つけるに至ります。

嘉村 ふむ。

三葉 老兵とその部下は、負傷しながらも生きていた。……主人公らはホッとします。アレコレ思うところはあるが、何にせよ、あとは彼らを連れて帰還するだけだ。……ところが老兵らは帰還を拒否する!

嘉村 ほぉ!

三葉 老兵曰く、すぐそばにゾンビの大群がいる。どうやら夜行性タイプのゾンビのようで、毎日夜になると襲いかかってくる。

嘉村 ふむふむ。

三葉 主人公は「ここは、シェルターから距離があります。一旦撤退しても問題ないでしょう」と進言しますが……老兵は首を横に振る「すぐそばに、ボロボロになった製薬会社の倉庫があるのに気づいたか?」「ええ。大量のゾンビウイルスワクチンがありましたね」「そうだ」「ここへ来る途中に見つけました」「ふむ。ワクチンを投与すれば、ゾンビに噛まれても正気を保つことができるようになる。ゾンビに対抗するには絶対に必要なものだ。しかし……」「今となっては、製造する技術は失われてしまった……」「ああ。だからこそ、廃墟に遺されたワクチンが重要なのだ」「……」「わかるな?わしらが撤退したとしよう。一体どうなると思う?ゾンビはここを通過し、そしてあの倉庫をメチャクチャにしてしまうだろう」。

嘉村 ふむふむ。老兵らはワクチンを守るために、ここでゾンビと戦っていたんですね。

三葉 ええ。……老兵は続ける「敵の数は500か、それとも600か。まぁ1000はいないだろう」「勝算は低い……」「ああ。だがな、半世紀前の戦いも勝算は低かった。しかし、わしらは勝った」「……」「ここだけの話をしよう。ここだけの話、わしはワクワクしているんだよ。『かつて英雄だった男』と呼ばれるのには、飽き飽きしていてな。もう一度英雄に返り咲いてやろうと思っている」。

嘉村 なるほど。

三葉 主人公らは「妙な展開だ。まさかこんなことになるとは……」と困惑しますが、彼らはすぐに覚悟を決め……老兵とともに「明日への希望」のために命を懸けた戦いに臨むことになったのです。

嘉村 ふむ。結果はどうなるんです?

三葉 「プライベート・ライアン」のように、大半の兵士は死亡。ごく一部のみが生き残り、ワクチンを持ってシェルターに帰還する……という結末がいいですかね。

嘉村 なるほど。

三葉 さて、以上のストーリーを「プライベート・ライアン」と比較する形で整理してみましょう。


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三葉 ご覧の通り、「案①」は「ゾンビパニック版『プライベート・ライアン』」です。


案②


嘉村 続いて、「案②」にまいりましょう。

三葉 はい。「案②」は、「自衛隊員が、『避難指示を無視したアホな若者の救出』という理不尽とも思える任務に就くが、思わぬ展開を経て、猛獣と戦うことになる物語」です。


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嘉村 今度は自衛隊!

三葉 ええ。早速ですが、「プライベート・ライアン」と比較してみましょう。


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嘉村 ふむふむ。

三葉 台風などの自然災害が発生した時に、「避難指示を無視してバーベキューをしていたアホな若者たちが、川の中州に取り残されました。自衛隊が彼らを救助しました」なんてニュースを聞くことがあるじゃないですか。

嘉村 あー、ありますねぇ。

三葉 でね。

嘉村 ええ。

三葉 「そんな類の任務に従事する自衛隊員は、一体どんな気持ちなんだろう?」と考えてみたんですよ。

嘉村 ふむ。

三葉 ざっくばらんに言って……「あー、アホらしい!じつにアホらしい!こんなアホな連中のために、オレたちは命を懸けるのかよ!」なんてことを考えてると思うんですよね。

嘉村 ふーむ……。

三葉 自衛隊員にしてもレスキュー隊員にしても、あるいは警察官にしても、無論こんなことは絶対に口にしないと思いますよ。

嘉村 ええ。

三葉 市民の生命や財産のために黙々と手を動かす。一市民として、彼らの働きには本当に頭が下がります……が、彼らだって人間です。心の中では毒づくことだってあるでしょうよ!

嘉村 うーん……まぁ確かに、人の子ですからねぇ。

三葉 「案②」は、任務を命じられた自衛隊員が、そんな風に毒づくところから始まります。

嘉村 なるほど。

三葉 激しい雨と風。そしていつ土砂崩れを起こすかわからぬ危険な山……そんな中で、彼らは取り残された若者を探します。

嘉村 ふむふむ。

三葉 途中、一部の隊員が負傷したりしつつも、やがて若者を発見する。あとは帰還するだけだとホッとしたところで……主人公らは気づくのです。森の中に猛獣が潜んでいることに!

嘉村 猛獣!?

三葉 ええ。台風の影響で、近くの動物園から猛獣が逃げ出したのです。ライオン、トラ、ピューマ、チーター、ゾウ、カバなどなど……。主人公らは顔を見合わせます。

嘉村 ほぉ。

三葉 このまま猛獣を放置すればどうなるか?彼らはエサを求めて山を下り、やがて付近の避難所を襲うでしょう。避難所には、たくさんの市民が集まっている。この荒天の中、彼らを別の避難所に移すのは無理がある……。

嘉村 なるほど。

三葉 主人公らは決意します「オレたちの仕事は人命救助。ここで猛獣を倒すのだ!」。

嘉村 ふむ。

三葉 若者たちは仰天する「冗談じゃない!あんたらは、オレたちを助けに来たんだろ!早く山を下りようぜ!……えっ、避難所が危ないって?知ったことか!!」。

嘉村 ふーむ……クソですねぇ。

三葉 主人公らは、若者たちを無視することに決める。

嘉村 それがいいですね。

三葉 また、彼らは自衛隊員ですが、今回は災害救助のために出動したので銃などの火器を携帯していません。致し方なくナイフで槍を作ったり、罠を仕掛けたりして戦いに備えます。

嘉村 ふむふむ。

三葉 とまぁ、「案②」はそんな物語です。主人公らは、文句を垂れるばかりでちっとも役に立たない若者らをかばいつつ、猛獣と戦う。少なからぬ隊員が命を落としますが……彼らの活躍により、猛獣は全滅。かくして避難所は守られたのでした。

嘉村 なるほど!

三葉 以上、「自衛隊員版の『プライベート・ライアン』」でした。


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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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