「『AではなくてBだ』と相手の言葉を訂正するが、じつはAもBも意味は同じ」というボケを使って、軽口を叩いたり笑いを誘ったりする ~アニメ「HIGHSPEED Étoile」の場合
◆概要
【「『AではなくてBだ』と相手の言葉を訂正するが、じつはAもBも意味は同じ」というボケを使って、軽口を叩いたり笑いを誘ったりする】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:アニメ「HIGHSPEED Étoile」(第9話)
▶1
本作の主人公は、凛(若い女性)。
彼女は、「NEX Race」というカーレースのドライバーである。
ある日のレース前、
・Step1:ドライバーたちが控室に集まり、あれこれおしゃべりしていた時のことだ。
・Step2:凛が言った「なんか今日は調子よくって、すっごいことできそう……!」。
・Step3:ソフィア(姉御肌の優しい先輩)は笑顔になる「楽しみねぇ。メイクしとく?」。――レースで上位に食い込めば、表彰台に上がったり、テレビに映ったりすることになる。それに備えてメイクをしてあげようかという意味だ。
ソフィアの言葉に、
・Step4:凛は「かわいくオナシャース!」(=かわいくお願いします)。
・Step5:するとソフィアは、「ざんね~ん❤すっごくかわいくしかできないの~❤」と微笑んだ。
・Step6:凛も笑顔で「じゃあ、『すっごくかわいく』で!」。
▶2
ご注目いただきたいのは、Step4-5のやりとりである。
「かわいくオナシャース!」と言った凛に対して、ソフィアは「ざんね~ん❤」と応じた。「それはできない」と否定したわけだ。ところがその後に出てきた言葉は「すっごくかわいくしかできないの~❤」。
「かわいく」と「すっごくかわいく」はまぁ同じ意味だろうから、つまりこれは【「『AではなくてBだ』と相手の言葉を訂正するが、じつはAもBも意味は同じ」というボケを使って、軽口を叩いたり笑いを誘ったりする】という技法である。
この技法が使われたことで、いかにも「仲よし女子2人の会話」という雰囲気が醸し出されたといえるだろう。
また、レース前にもかかわらず2人がリラックスできていること、悪くいえば緊張感を欠いていることが強調された。そして、じつはこの場にいたものの上記の会話には参加せず、1人きりで何やら思い悩んでいる様子の劉悠然というドライバーとの相違が明確になった。「今回のレースで勝つのは凛やソフィアの方か、それとも劉悠然の方なのか?」と興味を惹かれた鑑賞者は少なくないと思う。
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