「スーツのジャケットを脱いでいる→途中で着る」という変化によって、「そのキャラは最初はフレンドリーな雰囲気を醸し出そうと努力していたが、途中で放棄した」と暗示する ~映画「レディ・プレイヤー1」の場合
◆概要
【「スーツのジャケットを脱いでいる→途中で着る」という変化によって、「そのキャラは最初はフレンドリーな雰囲気を醸し出そうと努力していたが、途中で放棄した」と暗示する】は「キャラの感情などを暗示する」ためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「レディ・プレイヤー1」
▶1
本作の舞台は近未来。人々は、仮想空間「オアシス」の中でたくさんの時間をすごしている。
また、「オアシスに眠る3つの謎を解いた者には、報酬として大金とオアシスの運営権を与える」というゲームが現在開催されており、人々はどうにかして謎を解こうと必死になっている。
主人公・パーシヴァル(若い男性)も例外ではない。
物語前半、
・Step1:1つ目の謎を解くことに成功したパーシヴァル。彼は一躍有名人になる。
・Step2:しばらく後、ソレント(IOI社のCEO、中年男性)から連絡が入った。会って話したいという。
・Step3:なお、IOI社はたくさんの従業員をオアシスに送り込み、組織的に活動することでゲームクリアを目指している会社だ。狙いはもちろん、クリアした者に与えられる莫大な報酬である。
物語中盤、
・Step4:パーシヴァルはソレントと面会した。
・Step5:ソレントは愛想よく出迎えた(彼はいつもびしっとスーツを着こなしているのだが、この時は珍しくジャケットを脱いでいる)。
・Step6:ソレントは言った「うちの従業員にならないか?」。パーシヴァルを雇って一気にゲームクリアを目指そうというわけだ。彼は条件を提示した「年収は400万ドル。見事謎を解いたらボーナスも出そう、2500万ドルだ」。
・Step7:素晴らしい待遇である。が、パーシヴァルは拒否する。何しろIOI社といえば、金のことしか考えていない悪名高い会社だ。そう、彼らはオアシスを愛していない。そんな連中がオアシスの運営権を握ったらどうなるだろうか?……俺たちの大切な仮想空間がメチャクチャにされるに決まっている!
パーシヴァルの断固とした姿勢を前に、
・Step8:ソレントは態度を豹変させた(この時、彼はジャケットを着る)。勧誘は不可能、これ以上愛想よくしても意味がないと判断したのだろう。彼はパーシヴァルを罵倒し、「いいだろう。このゲームに勝つのはどうせ私なんだからな!」。かくして交渉は決裂した。
▶2
ご注目いただきたいのは、Step5と8である。
上述の通り、ソレントはいつもびしっとスーツを着こなしている。ところがStep4では珍しくジャケットを脱いでいた。
なぜか?
パーシヴァルを勧誘するためだろう。ジャケットを着ていると、どうしても堅苦しくなる。できる限りフレンドリーな雰囲気を醸し出し、上手い具合に口説き落としたかったに違いない。
ところが、Step8でソレントは上着を着る。
なぜか?
勧誘を諦めたからだ。もう無理してフレンドリーな雰囲気を作る必要はない。彼はいつものスタイルに戻った。
つまり、【「スーツのジャケットを脱いでいる→途中で着る」という変化によって、「そのキャラは最初はフレンドリーな雰囲気を醸し出そうと努力していたが、途中で放棄した」と暗示する】というテクニックが使われているわけだ。
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