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「ROOKIES」とはまた別の「不良ばかりの野球部」の物語を考えよう!!|『がんばれ!ベアーズ』(2)

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 前回に引き続き、映画「がんばれ!ベアーズ」をベースに新しい物語を妄想します。

※「がんばれ!ベアーズ」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。

嘉村 「がんばれ!ベアーズ」は、いまは落ちぶれた元プロ野球選手が、問題児だらけの少年野球チームの監督になり、選手と共に奮闘するコメディ映画ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?


案①


三葉 まずは、「がんばれ!ベアーズ」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


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三葉 ……です(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむ。

三葉 さて以上を踏まえて「案①」は……ズバリ!「元高校球児の主人公が、不良ばかりの高校野球部の顧問になり、部員と共に奮闘する物語」です。


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嘉村 ほぉ!野球がテーマですか。「がんばれ!ベアーズ」と同じですね。

三葉 はい。同じ野球でも、舞台を「アメリカの少年野球チーム」から「日本の高校野球部」に移すと、まったく違う物語になると思うんですよね。だから、敢えて野球をテーマにしてみました。

嘉村 なるほど。

三葉 さて、主人公は高校の教師です。ここではA先生と呼ぶことにしましょう。彼は背が高く、立派な体格をしていますが……何に対してもやる気ゼロ。自堕落で怠けた生活を送っている。物語は、そんなA先生が野球部の顧問になるところから始まります。

嘉村 ふむふむ。

三葉 ただし野球部といっても名ばかりで、実際は不良の巣窟。普段は部室をたまり場にしてダラダラ過ごし、週1~2回は校庭に出てくるものの練習らしい練習をすることはなく、制服姿のまま遊び半分にバットを振るだけ。

嘉村 なるほど。

三葉 小心者の校長は、野球部がいつ問題を起こすか不安でたまりません。しかし相手は屈強な不良!彼らを指導してやろうという勇敢な教員はいない……そう!われらがA先生を除いては!

嘉村 お-!

三葉 校長は、A先生がかつて高校球児で、甲子園にも出場したことのある名ピッチャーだったことを知り、目を輝かせます。「ねぇ、Aくん。別段甲子園に出場してくれと言っているのではない。連中が飲酒、喫煙などの問題を起こさないように監視してくれればいい」と猫なで声。

嘉村 ふむふむ。

三葉 しかし、A先生は鼻で笑う。「冗談じゃないっすよ。あんなクソガキどもの相手なんてしてられないっす」。校長は苦虫を噛み潰したような顔をして、「わかったよ。顧問手当を出そう。月5万だ」「5万!?」「ただし!連中が何か問題を起こしたら、逆にマイナス5万円。どうかね?」「やります!やらせてください!」……とまぁ、そんな教育者とは思えぬやりとりがあって、彼は顧問に就任します。

嘉村 ふーむ……。ところでアレですね。

三葉 何です?

嘉村 要するにこれは、「不良ばかりの野球部」の物語だと思いますが……。

三葉 ええ。

嘉村 そうなると、どうしても「2人寄り添って歩いて 永久の愛を形にして」という懐かしい歌声が脳内に流れてきますね。

※著作権者による動画です。


三葉 ああ、「ROOKIES」ですね!


三葉 確かに「不良ばかりの野球部」の物語というと、「ROOKIES」を連想する方が多いと思います。

嘉村 ええ。

三葉 ただし「案①」の主人公は、「ROOKIES」の川藤先生ほど真面目でも熱血でもありません。彼は「がんばれ!ベアーズ」の主人公・バターメーカーのような自堕落な人間です。

嘉村 ほぉ。

三葉 何しろ金目当てで顧問になるわけですからね。

嘉村 確かに。

三葉 無論、野球を教える気は皆無。部員に向かって、「問題を起こすんじゃねぇぞ。余計なことしなきゃ毎月1万円やるからよ」なんて言って部室で高いびき。

嘉村 クズですねぇ……。

三葉 一方の部員。これも「ROOKIES」とは違います。

嘉村 ほぉ。

三葉 「ROOKIES」では、川藤先生の熱い言動をきっかけに、ろくでなしの不良どもが真剣に野球に取り組むようになる。その過程が物語前半の大きな見せ場になっていましたが……。

嘉村 ええ。若菜くんが入部するところなんて感動的でしたよね!

三葉 「案①」の部員たちは、そんな展開を待ち望んでいたんですよ。

嘉村 ……ん?

三葉 いえね、じつは彼らは「ROOKIES」の愛読者だったのです。

嘉村 ほぉ!

三葉 「いつか自分たちのところにも川藤先生のような熱血教師がやってきて、青春の汗を流す日が来るのではないか?……来るかもしれない……来てほしい!……いや、無理かなぁ……」と夢想していたのです。

嘉村 アレですね。「いつか白馬に乗った王子様が私を迎えにやってくるの♡」と夢見る乙女みたいですね。

三葉 そんな彼らのもとにA先生がやってきた!そして、「オレがAだ!今日から野球部の顧問だ!!」なんて言うんですからね。彼らは舞い上がりますよ。

嘉村 無理ありませんね。

三葉 部員らは、それまでとは打って変わって猛練習を始め、「先生、今日のメニューはいかがしましょうか!」なんて忠犬のごとくA先生につきまとうようになります。

嘉村 不良たちがちょっとかわいく思えてきますね。

三葉 A先生は部員たちの突然の変化に驚き、何があったのかと練習の様子を見てみると……これがドヘタ!

嘉村 あー……まぁ不良の集まりですからね。これまで真面目に野球をやってきたわけではないし。

三葉 A先生は、小学生にも負けるのではないかというそのヘタクソさ加減に驚きますが、すぐに「……問題さえ起こさなければ何でもいいや」と考え直し、その場のノリと勢いでアドバイスを送ります。

嘉村 ノリと勢いのアドバイス?

三葉 「オメェはあれだな。顔がイチロー選手に似てるな。よっしゃ!振り子打法でいけや」「振り子って何すか?」「ググれカス!!」……なんて具合ですね。

嘉村 ひどい……。

三葉 そして初めての練習試合。

嘉村 ボロ負けでしょうねぇ。

三葉 ええ、ボロ負けですね。

嘉村 ふむ。

三葉 さて、ここで物語が大きく動きます。

嘉村 おっ!

三葉 A先生はコールド負けだろうが、1回の表だけでエラー38個という大記録を残そうがちっとも気にせず、「校長から5万円もらったら何に使うかなぁ。ウヒヒッ!」なんて考えているわけですが……。

嘉村 部員たちは大変なショックを受けるわけですね?

三葉 はい。普段は根拠のない自信にあふれ、たとえ悲しいことがあってもグッと堪えて表には出さぬ不良連中が……号泣しているではないか!

嘉村 ほぉ。

三葉 さすがのA先生も、これには動揺する。かくして翌日から、A先生による熱血指導が始まるのです。

嘉村 なるほど。

三葉 部員たちを徹底的にしごき、さらに運動神経抜群の生徒を他の部から強引に引き抜いたり、他校の練習を偵察したり……様々な努力の甲斐あって、彼らはメキメキ腕を上げていきます。

嘉村 ふむ。

三葉 そして甲子園の予選が始まる。A先生率いる野球部は「不良が野球?フン、笑わせる!どうせ1回戦負けだよ」なんて下馬評を覆し、堂々勝利を重ねていく。次第に周囲の見る目も変わり……つい数か月前までは「学校の面汚し」と呼ばれていた連中が、いまや学校のスターになったのだ!

嘉村 ふむふむ。

三葉 そしてすっかり熱血漢となったA先生は、「よっしゃ!全国制覇だ!」と大望を抱くようになり……。

嘉村 ええ。

三葉 次第に勝利至上主義者に変貌していきます。

嘉村 おー!いよいよですね。

三葉 これまでは、曲がりなりにもスポーツマンシップやフェアプレイ精神を重んじていたのですが……。

嘉村 ええ。

三葉 「お前はヘタクソだ。いやいや、言い訳したってダメだ!……だがな、お前の目つきの悪さ、これは一級品だ。いいか、バットを振るなよ。どうせ当たりやしねぇ。そんな暇があったら、ピッチャーを死ぬほど睨みつけろ。ビビらせて、フォアボールを狙うんだ。わかったな?バットを振ったらテメェはクビだぞ!」とか……。

嘉村 うーむ……。

三葉 「スライディングは、相手の選手に向かってするもんだ。オラ、聞いてんのかよ!ざわつくんじゃねぇ!いいか?自分はセーフになる。相手の選手のスネに一撃入れる。これこそスライディングだぜ」とか……。

嘉村 ラフプレイ……いや、ダーティプレイってヤツですね。

三葉 さらに、「オメェは、ボールにバットをぶつけるのが上手い。スタミナも目を見張るものがある。いいか?ヒットは要らん。ホームランも要らん。フォアボールも要らん。……ほしいのはファウルだ!10回でも100回でもファウルを連発しろ。そして相手ピッチャーを疲弊させる。これがお前の仕事だ!」とか……そんな指示ばかり出すようになります。

嘉村 ふーむ。

三葉 あるいはミスした選手に向かって、「いますぐ腹を切れ!腹を切って詫びろ!」と怒鳴り散らしたり。

嘉村 なるほど。

三葉 部員たちのフィジカルの強さを活かした作戦であり、確かに彼らは順調に勝利を重ねていきますが……。

嘉村 ええ。

三葉 先ほど申し上げた通り、部員たちは大の野球好きです。まともなプレイをさせてくれないA先生への不満は溜まり、部員同士の関係もぎくしゃくしてくる。

嘉村 ふーむ。

三葉 そして、迎えた予選の決勝戦!これに勝てば甲子園進出が決まるという大事な一戦です。

嘉村 いよいよクライマックスですね!

三葉 A先生はこれまで以上にラフでダーティで、そして勝利至上主義の指示を出しますが……ふとしたことから部員の顔に覇気がなく、チームとしてのまとまりも失われていることに気づきます。

嘉村 ふむふむ。

三葉 そして彼はこれまでの自分を反省し……「わがチームのモットーを変更する!『打てぬなら 殺してしまうぞ ホトトギス』改め、『全員野球』!全員で点を取り、全員で守るぞ!」と宣言。

嘉村 元のモットーがひどすぎる……。

三葉 そして、ミスした選手を「ナイスプレイ!いいガッツだった!」と励ましたり、相手選手にも「敵ながらあっぱれ!」とエールを送ったりするようになる……なんて具合ですね。

嘉村 なるほど。

三葉 その結果、チームは敗北し、甲子園出場を逃します。しかしA先生、そして部員の顔には充実感がみなぎっている!物語は、彼らが「お礼参りを楽しみにしてろよ!」なんて叫びながら野球場をあとにして……おしまい!

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて、以上ご覧いただいた「案①」のストーリーを、「がんばれ!ベアーズ」に沿って整理してみましょう。


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三葉 このように「がんばれ!ベアーズ」と「案①」を比べると、主人公が「元プロ野球選手/元高校球児」、舞台が「問題児だらけの(アメリカの)少年野球チーム/不良だらけの(日本の)野球部」という違いはありますが……。

嘉村 基本的なストーリーの構造は共通していると。

三葉 その通りです。


案②


嘉村 続いて、「案②」にまいりましょう。

三葉 はい。「案②」は、「元スイマーの主人公が、クセのある老人ばかりの水泳チームの監督になり、選手と共に奮闘する物語」です。


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嘉村 ふむふむ。

三葉 まずは以下の表をご覧ください。


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嘉村 なるほど。「元プロ野球選手」の代わりに「元スイマー」、「問題児だらけの少年野球チーム」に対して「クセのある老人だらけの水泳チーム」ですね。

三葉 あらすじはこんな具合です。すなわち……少子高齢化が進み、街には高齢者が溢れている。

嘉村 ふむ。

三葉 長寿はめでたいことですが……仕事を引退し、子育ても終わると、生活にハリがなくなってくる。

嘉村 ふーむ……。

三葉 ある人は鬱々として急激に老け込み、またある人は刺激を求めて買春やらドラッグやらに手を出し、さらにまた別の人は暇が高じて若者に文句を垂れ、逆にぶん殴られて大けがを負ったり……そんな老人への対応が大きな社会問題となった世の中。

嘉村 何やらリアリティのある話ですね……。

三葉 とある自治体でも、こうした老人の存在が社会問題と化しています。商店主や土地の名士、青年会議所のメンバーらが市長に対策を講じるよう直談判しますが、「わかる。あんたらの言いたいことはよくわかる。ここだけの話、私だって同意ですよ。でもね。だからってどうしたらいいのよ。刑務所か病院にでも収容する?できるわけないでしょ。大体ねぇ、市長の私が『不良老人対策を行います』なんて言えると思います?そんなこと言ったらね、市民団体とマスコミが大騒ぎして、議会でフルボッコ。あっという間に私は失業ですよ」と市長。

嘉村 なるほど。

三葉 かくして彼らは知恵を出し合い、「要するに生活にハリがないのが問題だ。彼らに目標を与えればいいのだ」と結論づける。

嘉村 確かに。

三葉 では、一体全体どんな目標を与えるといいのでしょうか?……ふと市長が思いつきます。「そういえばわが市には、かつてオリンピック強化選手にも選ばれ男がいたな。彼はいま何をしているのかね?」「真昼間からパチンコを打っているのを見ましたよ」「ほぉ……」「まぁ、まともな仕事には就いていないようですね」「よろしい!水泳チームを作ろう!」「水泳!?」「うむ!」「なるほど。あの男にコーチを頼むわけですね?」「そうだ。そして目標はドーバー海峡だ!」「ドーバー海峡!?」「そう!ドーバー海峡横断レースに出場しよう!毎年夏に、5人1組のチームレースが開催される。それに出場し、世界一を目指すのだ!」「老人がドーバー海峡横断レース……さすがに無理がありませんかねぇ」「なぁに。目標ってのは高いほど燃えるものさ!」……とまぁ、そんなやりとりがあって……。

嘉村 なるほど。

三葉 あとは「がんばれ!ベアーズ」や「案①」と同様です。「落ちぶれた主人公が登場」 → 「当初は怠けきっているが、ふとしたことでやる気を出す」→ 「努力の結果、勝利を重ねる」 → 「勝利至上主義に陥り、チームの雰囲気が悪化」 → 「ドーバー海峡横断レース中、主人公は勝利至上主義が誤っていたことに気づく」。

嘉村 ふむふむ。

三葉 そして、最終的に優勝を逃す。しかし、彼らは不幸ではありません。なぜならば、素晴らしい「仲間」を手に入れたのだから!……で、おしまい。

嘉村 なるほど。

三葉 ちなみに……この「案②」は、「こち亀」の「亀有老人会世界へ!!の巻」(122巻収録)というエピソードを参考にしています。


嘉村 ほぉ!

三葉 「主人公の両津が、暇を持て余した老人を率いてドーバー海峡横断レースに参加し、見事優勝を果たす」というエピソードなんですが、「案②」はこれを膨らませ、さらに「勝利至上主義に陥る → 反省してハッピーエンド」という展開を追加してみました。

嘉村 ふむふむ。

三葉 このように、新しい物語を作る際に、自分の好きな短編作品を膨らませ、『がんばれ!ベアーズ』テイストを追加してみるのも一案だと思います。みなさんもぜひ!



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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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