「類似性の高い形状」を架け橋としてシーンをつなぐ ~「バスタブの排水口」から「瞳」へ
◆概要
【「類似性の高い形状」を架け橋としてシーンをつなぐ】は「シーンとシーンのつなぎ方」に関するアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「サイコ」
▶1
本作の主人公は、マリオン(30歳頃の女性)。
ある夜……
・Step1:マリオンがシャワーを浴びていると、ふいに何者かが浴室に入ってきた。相手はナイフを持っている。そしてマリオンに近づくと……彼女を刺した!
・Step2:マリオンは悲鳴を上げる。だが犯人は容赦しない。何度も何度も執拗にナイフを振るう。めった刺しである。
・Step3:しばらくして犯人は去っていった。一方、マリオンはバスタブの床に崩れ落ちた。シャワーの湯と共に、彼女の血が排水口に流れ込んでいく。カメラは排水口に近寄る。排水口がどアップで映る。
・Step4:……と次の瞬間、画面が切り替わり、マリオンの瞳がどアップで映った。瞳はずっと開かれたままだ。もう閉じることはない。だって彼女は死んでいるのだから。
▶2
ご注目いただきたいのは、Step3から4への移行である。上図の通り、「バスタブの排水口」と「瞳」の形状がよく似ているのがポイントだ。
そう、この類似性を架け橋として、Step3とStep4の映像がスムースにつながれているわけだ。
▶3
はて。なぜここで【「類似性の高い形状」を架け橋としてシーンをつなぐ】というテクニックが使われているのだろうか?
私が思うに……
・理由1:排水口は開いたり閉じたりするものではない。常に開きっぱなしだ →「マリオンの瞳が開きっぱなしであること = 絶命したこと」を強調している
・理由2:一度排水口に流れ込んだ水はもう二度と戻ってこない →「マリオンがもう二度と戻ってこないこと = 絶命したこと」を強調している
つまり、マリオンが絶命したことを私たち鑑賞者にはっきり伝えるために【「類似性の高い形状」を架け橋としてシーンをつなぐ】というテクニックが採用されたのだろう。
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