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これぞ理想的な「新キャラ登場回」!!|【第4χ(第16話) 弟子にしてくだΨ】「斉木楠雄のΨ難(第1期)」を三幕構成で分析する
▶ 「三幕構成」を詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ👽 → シド・フィールドの「三幕構成」をバッチリ説明するぜ!!
分析対象
三幕構成
ポイント①
<1>
本話のストーリーをざっくり整理すると……
・第1幕:ある日、楠雄のもとに手紙が届いた「あなたが超能力者だと知っている」「あなたの弟子にしてほしい」 → 楠雄は、差出人がどんな人物なのか知るためにサイコメトリーを使おうと考える → だがその前に、差出人がやってきてしまう
・第2幕前半:差出人の名は鳥束。霊能力者だそうだ
・第2幕後半:鳥束は自身の能力を嘲り、頭を下げた「どうかオレを弟子にしてください!超能力を教えてください!」
・第3幕(1):鳥束は超能力をマスターして、やりたい放題に生きたいと告白した → 超能力のせいでさんざん苦労してきた楠雄は、鳥束の言葉にイラッとする
・第3幕(2):楠雄が鳥束に触れてしまい、サイコメトリーが発動 → 楠雄にも霊が見えるようになる → あっちにも霊。こっちにも霊。異様な光景だ! → 楠雄が鳥束に同情する
<2>
ご覧の通り、本話は「新キャラ・鳥束が初登場するエピソード」です。
特段大きな事件が起こるわけではありません。まぁ「鳥束が初登場するだけ」と言えばそれだけ……なのですが、これがメチャクチャ面白い!
ただの「新キャラ登場回」なのに、なぜこれほどまでに面白いのか!?
本話に使われているテクニックを、1つずつご説明していきましょう。
ポイント②
<1>
まずご注目いただきたいのは、第1幕の初っ端、すなわち「鳥束が初登場する以前から鳥束の紹介が始まっている」という点です。
具体的には、
・1:手紙(「私も特別な力を持っている」/「師匠」「弟子」「下僕」といった表記)
・2:早すぎる訪問
の2つですね。
この2つから、鳥束がどんなキャラなのかなんとなく見えてきますよね。たぶんあまり賢くなくて、軽薄な感じで、そして特別な力の持ち主!
いかがでしょう、なかなか面白そうなキャラだと思いませんか?
どんなヤツなのか早く見てみたいですよね!「いつ登場するのかな?」とワクワクしてくる。
<2>
重要なのは……そう、この「ワクワク感」です。
新キャラが顔を出す前からキャラ紹介を開始して、鑑賞者に「早く登場しないかなー!」とワクワクしてもらう。そして満を持して新キャラ登場……という段取り。これが物語を盛り上げるのです。
つまり、新キャラ登場後にキャラ紹介を開始するようでは遅すぎる!
ポイント③
<1>
続いて、第2幕前半と第2幕後半。
実際に鳥束が登場し、彼の人となりが描写されるフェーズです。
鳥束は、ざっくり言えば「アホで軽薄。でも悪人ではない人物」として描かれています。
<2>
ここでご注目いただきたいのは、「でも悪人ではない」の部分。
だって、鳥束は金と女のことしか考えていない煩悩の塊ですよ(寺の息子なのに!)。まぁ、クズといっていい。
それなのに悪人っぽくはない!
一体なぜか?
<3>
答えは単純です。
ズバリ、自身の欲望にストレートだから。
というのも、私たちは「ストレート・直球・まっすぐ」な人物には好意を感じるものです。たとえそれが煩悩まみれのクズ男でも、笑って受け入れることができる。かわいいとすら感じる。
一方、多くの人は「陰険・ひねくれ・腹黒」な人物にはヘイトを感じるものです。
つまり……同じ「アホで軽薄な人物」でも、【ストレートなアホ】として描写すれば鑑賞者は好意を持ってくれる。
逆に【陰険なアホ】として描けば、鑑賞者は嫌悪感を覚える。
この使い分けが重要です。
ポイント④
<1>
上述の通り、本話は「新キャラ・鳥束が初登場するエピソード」。
したがって、本話の使命は「鑑賞者に鳥束の人となりを伝え、好意を持ってもらうこと」です。
で、この使命ですが、第1幕・第2幕前半・第2幕後半で達成されていると言えるでしょう。
鳥束がどのようなキャラなのか、鑑賞者にはもう伝わっている。「なかなかユニークなキャラじゃん」と感じた人だって少なくないはずです。
<2>
つまり、本話は第2幕後半で幕を閉じてもいい……のですが、しかし1つ問題がある。
ズバリ、物語としての面白みが足りないんですよ!
いくら鳥束が魅力的なキャラでも、彼が「登場するだけ」ではさすがにストーリーに動きがなさすぎる。
もっと起伏がほしい!
次のエピソードへのヒキだってほしい!
<3>
その点、本話はじつによくできています。
そう、第3幕!第3幕でしっかりストーリーが動くんですよ!
具体的には、以下の2点です。
▶ 1:鳥束が、楠雄をイラつかせる
楠雄は無感情キャラです。いつも超然としている。
そんな彼がイラッとするわけですからね。これは緊迫感のあるシーンですよ。当然、鑑賞者は驚くでしょう。「どうしたどうした!」と前のめりになるに違いありません
本話のクライマックスと言えるでしょう。
▶ 2:楠雄が、鳥束の「感覚」を体験。鳥束の苦労を知り、同情する
楠雄は無感情で皮肉屋です。一方、鳥束はアホで軽薄。2人は真逆のキャラです。
しかし最後の最後に、楠雄が鳥束に同情を示しました。そう、2人には「特別な力を持つがゆえの生きづらさ」という共通点があり、「特別な力を持つ者同士だからこそ理解し合える/慰め合える関係」になり得るのです。つまり、「性格的には真逆ながらも、理解し合えるコンビ」。
多くの鑑賞者は「2人はこの先、どのような関係になるのだろう?次話以降も、この凹凸コンビから目を離せないぞ!」と感じたことでしょう。
これが本話のヒキです。
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以上、3つのテクニックをご説明しました。
皆さんも、ぜひ使ってみてくださいねー!!
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最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(担当:三葉)
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