この「頭の悪いセリフ」を見よ!!|『女番長ブルース 牝蜂の逆襲』に学ぶテクニック
名作映画を研究して、創作に活かそう!
本記事では、「女番長ブルース 牝蜂の逆襲」に【パンチの効いたセリフ】などを学びます。
※「女番長ブルース 牝蜂の逆襲」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。
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テーマ発表!!
映画「女番長ブルース 牝蜂の逆襲」には、刺激的なシーン、魅力的なエピソードが盛りだくさんです。
その中でも、特に目を引くものをいくつかご紹介しましょう。
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<主要キャラのご紹介:玲子>
▶ 本作の主人公
▶ 女性、20歳頃
▶ 女性ばかりの不良グループ「アテネ団」のスケバン
▶ 仲間と共に、ケンカ、博打、シンナー、自動車泥棒など、やりたい放題の毎日
<主要キャラのご紹介:ジュン>
▶ 女性、20歳頃
▶ アテネ団の一員。玲子の前のスケバン
▶ 映画冒頭、少年院に入っている
【Topic①】この「頭の悪いセリフ」を見よ!!
映画開始からおよそ6分経ったところで、こんなシーンがあります。
玲子らアテネ団の団員が、車で走っている。
しかし、ふいにエンジンが止まった。ハンドルを握る団員(その名は「サセ子」!)が舌打ち「チェッ!エンコや」。
玲子が文句をつける「サセ子、お前のパクった車はロクなのがないじゃん」。
どうやら、彼女らが乗っているのは盗難車のようです。
玲子が指示を出した「早く直しな」。
サセ子が車を降りる。
すると、嗚呼、何と言うことか!エンジンルームから白煙が上がっているではないか。
サセ子は、慌ててボンネットを開けた。
むわっと煙が広がり、辺りが真っ白になる。一同せき込む。
間もなく煙が晴れる。
サセ子がエンジンルームを覗き込む。直後、彼女は悲鳴を上げました「機械ばっかり!これやったら、次の車をパクった方が早いわ」。
かくして、彼女らは傍に停めてあった車を盗むことにします。
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さて、このシーン。
ご注目いただきたいのは、「機械ばっかり!これやったら、次の車をパクった方が早いわ」というサセ子のセリフです。
いやぁ、これすごいセリフですよね!
だって、エンジンルームを覗いて「機械ばっかり!」って……そりゃ機械ばっかりでしょうよ!だってエンジンルームだもん!
これほどまでに頭の悪いセリフはなかなか見かけません。
さらに、「これやったら、次の車をパクった方が早いわ」というセリフ。早いとか遅いとかそういう問題なんですかね……?
言うまでもなく、自動車泥棒は犯罪です。しかしサセ子のこのあっけらかんとした態度は、一周回って好感が持てる。
さりげない、しかしじつにパンチの効いたセリフと言えるでしょう。
【Topic②】若い女性が仁義を切る
「仁義を切る」というのは、ヤクザ(やそれに類する人びと)の習慣です。
最もよく知られているのは、映画「男はつらいよ」の寅次郎でしょう。
寅次郎が中腰になり、右手を前に出して、「わたくし、生まれも育ちも東京葛飾柴又です。姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します」なんて挨拶するシーンをご記憶の方は多いかと思います。
あれが「仁義を切る」というやつですね。
本作には、玲子とジュンが仁義を切るシーンがあります。
すなわち……映画開始から17分38秒経ったところで、少年院に入っていたジュンが戻ってきた。
玲子とジュンは初対面です。
まずは玲子がスッと腰を落とし、右手を前に出した。
「お初にお目にかかります。挨拶前後、間違えましたらごめんなさい。わたくし、関東よりの流れ者。ただいまアテネ団で番を切りますスケ番の玲子です」
対するジュンも同じ姿勢になって、
「わたくし、人呼んでカツアゲのジュン。タタキとカツアゲで2度目の少年院帰り。よろしく!」
※タタキ:強盗
上述の通り、玲子もジュンも20歳頃の若い女性です。そんな2人がヤクザ風に仁義を切る……じつにユニークなシーンだと言えるでしょう。
また、このシーンについて、植地毅氏は以下のように指摘しています。
任侠映画のご本家がセルフパロディーを堂々と同じ時間軸で行っているという点も素晴らしすぎる。
※「東映ピンキー・バイオレンス浪漫アルバム」より引用
一体何が「セルフパロディ―」なのか?
ご説明しましょう。
まず、本作を制作したのは東映です。
そして東映といえば、「仁義なき戦い」「日本侠客伝」などのヤクザ映画(≒ 任侠映画)でよく知られている。
その東映が、「若い女性が仁義を切るシーン = ヤクザ映画のパロディシーン」を撮った……つまり「セルフパロディー」というわけです。
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(担当:三葉)