「何と言ったらいいか……」「想像もできないよ……」と口ごもったり言葉を濁したりした相手に向かって、「○○だ」とズバッと言う ~ドラマ「デッド・トゥ・ミー 〜さようならの裏に〜」の場合
◆概要
【「何と言ったらいいか……」「想像もできないよ……」と口ごもったり言葉を濁したりした相手に向かって、「○○だ」とズバッと言う】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:ドラマ「デッド・トゥ・ミー 〜さようならの裏に〜」(第1話)
▶1
本作の主人公はジェン(中年女性)。
彼女は愛する夫を交通事故で、それもひき逃げで亡くした。
事故から3ヶ月、子どもたちの前では気丈にふるまっているものの、彼女はいまだ失意のどん底におり、感情を上手くコントロールできないなど問題を抱えていた。
ある日、
・Step1:隣人のカレンがやってきて、ジェンを励ましてくれた。
・Step2:それが善意の行動であることはわかるのだが――「あなたは独りじゃないわ」「話したくなったらいつでも呼んでね。夫のジェフと一緒に来るから」などと延々としゃべりまくるカレンを前に、ジェンはイライラを抑えられなくなる。
というわけで、
・Step3:カレンが「本当に、どんなに辛いか想像もできないわ……」と慰めの言葉を口にした時のことだ。
・Step4:ジェンはニコリともせずに言った「おたくのジェフが交通事故で突然死んだ。遺体はぐちゃぐちゃ。――はい、想像してみて」。
・Step5:直後、カレンは顔を引きつらせた。交通事故でぐちゃぐちゃになった夫の遺体を思わず想像してしまったのだろう。
▶2
ご注目いただきたいのは、「どんなに辛いか想像もできないわ……」というカレンの言葉である。
これは不幸に見舞われた人にかけるお約束の言葉、つまりは常套句だ。「あなたが途方もない悲しみの中にいることを理解していますよ」「私はあなたの味方ですよ」と伝えるための言葉であって、「あなたの気持ちを想像できない」と言いたいわけではない。
無論、ジェンだってそんなことはわかっている。
しかし彼女は言った「おたくのジェフが交通事故で突然死んだ。遺体はぐちゃぐちゃ。――はい、想像してみて」。
「荒れてるなぁ(笑)」「夫を亡くしたばかりで辛いのはわかるけれど、そんな揚げ足取りみたいなことを言わなくても……(笑)」と笑ってしまった鑑賞者は少なくないだろう。