「類似性の高い音・音楽」を架け橋としてシーンをつなぐ ~「クラブに流れる音楽」から「目覚まし時計のアラーム」へ
◆概要
【「類似性の高い音・音楽」を架け橋としてシーンをつなぐ】は「シーンとシーンのつなぎ方」に関するアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「マトリックス」
▶1
本作の主人公はアンダーソン。
30代の男性である。
ある夜のこと。
・Step1:アンダーソンは突如謎のメッセージを受け取った。彼は困惑しつつもその指示に従い、クラブに向かった。
・Step2:クラブでは「ズンズンズン!」と音楽が大音量で流れ、若者たちが思い思いに体を揺らしていた。そんな中……アンダーソンはトリニティという女性から声をかけられた。
・Step3:トリニティ曰く「あなたに危険が迫っている。それを知らせたかったの」「あなたは答えを探しているんでしょ?あなたが求めれば答えは向こうからやってくるわ」。彼女はそれだけ言うと去っていった。アンダーソンは無言でその背中を見送る。「ズンズンズン!ビービービー!」と音楽が響き渡る……。
・Step4:次の瞬間、画面が切り替わった。目覚まし時計が「ビービービー!」と鳴っている。時刻は朝の9時、場所はアンダーソンの部屋だ。アンダーソンは慌てて飛び起きた「しまった!寝過ごした!」。
▶2
ご注目いただきたいのはStep3と4。すなわち、「『ズンズンズン!ビービービー!』というクラブに流れる音楽」が「『ビービービー!』という目覚まし時計のアラーム」にパッと切り替わるという点である。そう、クラブの音楽がいつの間にやら目覚まし時計のアラームに切り替わっているのだ!
「音の類似性」を架け橋としてあまりにもスムースにシーンが切り替わるものだから、多くの鑑賞者は「おお!」と膝を打ったことだろう。
▶3
ところで。
制作者はシーンを切り替えるにあたって、なぜわざわざこのような工夫を凝らしたのだろうか。オシャレだからか?いや、確かにオシャレなのだが、どうもそれだけではない気がする。
私が思うに……じつはStep4はかなり重要なシーンである。
というのも、
・Point1:上述のトリニティとの接触をきっかけに、アンダーソンは世界の真実や己の役割を自覚するようになる。つまり彼は「覚醒する = 目を覚ます」わけだ →目覚まし時計は「覚醒」を示唆している
・Point2:しかし、アンダーソンが覚醒するのはもう少し後のこと。この時点では彼はまだ世界の真実にも己の役割にも気づいていない →だからアンダーソンは「覚醒できなかった = 寝坊した」
そう、Step4は物語の現状と今後の展開を暗示しているのだ。制作者はこのシーンに注目してもらいたかったに違いない。そこで、「クラブに流れる音楽」が「目覚まし時計のアラーム」にパッと切り替わるというオシャレなシーン移行の出番である。
つまり、Step4に注目してもらうためにStep3から4への移行に工夫を凝らしたのではないかと思うのだ。
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