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天才デザイナー・八神コウの心と尻に火が点く時!!|アニメ「NEWGAME!」に学ぶ

※本記事では、アニメ「NEWGAME!!」(第2期)を分析します。


本作には<新人・若手の成長>のみならず、<ベテランの成長>も描かれている


「NEWGAME!!」には、キャラたちの<成長>が描かれている。

いわゆる成長譚である。


ところで<成長>と聞くと、<新人・若手の成長>ばかりが思い浮かぶかもしれぬが……それは誤りだ。第一線で活躍し続けたければ、ベテランになろうとも、学び、成長し続ける必要がある。


そして!

「NEWGAME!!」には<新人・若手(青葉、ひふみ、はじめ、ゆん、ねね、もも、なる)の成長>のみならず、<ベテラン(コウ)の成長>もしっかりと描かれている


私は、これこそが「NEWGAME!!」の魅力(の1つ)だと思う。

つまり、<新人・若手の成長>ばかりにフォーカスする作品や、<ベテランの成長>をおまけ程度にしか描かぬ作品と比べて、厚みがあるのだ。深みがあり、コクがあるのだ。だから面白い。


天才デザイナー・八神コウの不幸


<1>

さて、ここからは八神コウに注目しよう。


八神コウ、彼女は紛うことなき天才デザイナーである。

何しろ……

・1:高卒でイーグルジャンプ社に入社し、その翌月には並み居る先輩をぶち抜いて社内コンペで優勝、新作ゲームのキャラデザ担当に抜擢される

・2:そして、コウがキャラデザを担当した作品は大ヒット。いまも続く一大人気シリーズとなった

・3:社外にも名前と顔が知られている


コウはまだ20代ながら、既にイーグルジャンプ社の顔なのだ。


<2>

つまりコウは、①抜群の才能を持ち、②若くして素晴らしい仕事を任され、次々に期待に応えてきたのだ。

さらに、③理解ある上司や同僚に囲まれ、④部下は皆彼女を尊敬している。


そう、いまのコウは幸福だと言えるだろう。


<3>

だが、人間万事塞翁が馬という。


<幸福>は同時に<不幸>でもあるのだ

そう、コウにはコウの不幸がある。すなわち、コウは天才であるがゆえに、憧れの先輩やライバルと呼べる同僚がいないのだ。


そして、<憧れの人がいない/ライバルがいない>という環境は往々にして人の精神を蝕むものだ。

・1:「○○さんのようになりたい!」「××さんに負けたくない!」という欲望や願望がないのだから、成長への意欲は湧きづらい

・2:また、未知なるものに挑戦しようという気概だって薄れるだろう

・3:そして、「まぁ、こんなものでいいかな」というぬるい仕事をするようになるのだ


かくして人は堕落する。

私は、第1~2話時点のコウは堕落しかけていたのではないかと思う。


<4>

<コウが堕落しかけていたこと>の傍証となるであろうシーンを3つご紹介しよう。


▶シーン1

第1話の面談シーンでのこと。

※補足:イーグルジャンプ社では、毎年4月に1年間の仕事を振り返る面談を実施しているそうだ。コウは、りんと葉月の面談を受ける。


面談中、コウはリラックスした笑顔を浮かべている。緊張感は皆無。

そして彼女は言った「今回はわりと上手くいったんじゃないかなと自分では思っています」


▶シーン2

第2話の社内コンペでのこと。

※補足:<社内コンペ>とは、新作ゲーム「PECO」のキャラクターデザインを決めるためのコンペである。葉月らの企画書をもとにデザイナー陣(コウや青葉)がキャラデザを行い、それを提出。最優秀案の提出者がキャラデザ担当者になれるのだ。


葉月は、コウの案をこんな風に評している「相変わらず素晴らしいね、八神の絵は。大好き♥……でもね、これだと『フェアリーズ』と世界が同じだよ。八神にはもっと自分の世界を広げてほしい」。

※補足:「フェアリーズ」は、コウがキャラデザを担当している人気シリーズの名称。つまり、「新作のキャラデザを決めようというのに、これでは新鮮味がない」と批判されてしまったのだ


▶シーン3

第2話冒頭、7年前のイーグルジャンプ社の様子が少しだけ描かれている。

当時のコウは、コミュニケーション能力にかなり難を抱えていたらしい。<困った新人/扱いづらい新人>と評されていたに違いない。


だが上述の通り、彼女は天才。あっという間に先輩たちをぶち抜いてしまう。

それに加えて……当時のコウにはオーラが感じられる。「成長したい!認められたい!」という強い意思が感じられる。ぬるい仕事なぞ死んでもしそうにない雰囲気がある。

嗚呼、いまとは大違いだ!!


<5>

いかがだろうか?

<コウが成長への意欲や、未知なるものへの挑戦心をすっかり失ってしまっていること>……もっと直接的にいえば、<コウがぬるい仕事をしていること>が読み取れるだろう。


コウの心と尻に火が点く時


<1>

しかし第2話中盤、コウの心と尻に火が点く。着火したのは、
我らが主人公・青葉だ。


以下、着火時の様子を詳しくご説明しよう。


<2>

そもそもの発端は社内コンペだった。

コウはキャラデザ案を提出するものの、上述の通り、葉月から「新鮮味がない」と批判されてしまう。一方、青葉は高評価を得る。葉月曰く「面白い!いまのままでは使えないが、ブラッシュアップしたものをもう1度見せてほしい」。


この結果に、コウは大ショックを受ける

<自身のデザインが批判された>というだけでも信じがたいのに、あろうことか<青葉 = 自分に尊敬の念を抱いてくれている後輩>に負けてしまったのだ!

かくしてコウは、大いに取り乱した。彼女は青葉に八つ当たりしてしまう。


だが、盟友りんの助言を得てすぐに立ち直った。

そして、【かつて自分が先輩たちにされて嫌だったことの逆(コウは天才ゆえ先輩たちにやっかまれ、嫌な目に遭ってきたようだ)、すなわち、かつての自分がしてほしかったこと】を青葉にしてやる

そう、コンペで才能の片鱗を見せたもののまだまだ経験不足の青葉に適宜助言を送り、かといって口出ししすぎることはなく、青葉を上手く成長させてやるのだ。


青葉は、初めてのキャラクターデザイナーとしての仕事に悪戦苦闘する。しかし決して諦めることなく、ベストを尽くす。

コウはそんな青葉の姿を優しく見守りつつ、自身も刺激を受ける。

※補足:第12話、コウは「奮闘する青葉から刺激を受けた」と発言している(詳細後述)。


<3>

以上をまとめると、

・出来事1:コウは社内コンペで青葉に負け、大ショックを受けた

・出来事2:コウは初めての仕事に奮闘する青葉を見て、刺激を受けた


この2つの出来事が、コウの心と尻に火を点けたのだ!

すなわち、コウは初心を取り戻したのだろう。クリエイターとしての情熱や、「もっと成長したい!誰にも負けたくない!」という願望・欲望が復活したのだ。


コウ、戦場に還る


<1>

こうして心と尻に火が点いたコウだが……第3話以降、コウは青葉らを導く<善き師>として描かれており、彼女の成長譚は一旦鳴りを潜める


<2>

だが、10話中盤。

再びコウの成長譚が動き出す。すなわち……

・1:コウが何かを決意する

・2:コウはクリスに、何かをこっそり依頼する

・3:りんはコウの異変に気づき、不安を感じる


そして第12話、新作ゲーム「PECO」の完成記念イベント直後に、コウは皆に告げた。「私、フランスのゲーム会社で数年間、武者修行をしてくるよ」と。

皆は仰天する。

コウは言った「突然でご迷惑をかけるのはわかっています。でも、数年後のことを考えた時に、『いまのままで私は成長できるのか?』って思ったんです。……わがまま言ってすみません。でも、挑戦してみたいんです!」。


<3>

さらに、第12話のエンディング直前。

フランスに旅立つ当日、コウと青葉はこんな会話をする。

---

コウ ごめんな、自分勝手な上司で……。

青葉 ……そうですよ、本当に……自分勝手な上司だと思います。八神さんは会社の看板なんですよ。自覚はあるんですか?それに、いつもテキトーだし、それでいてナイーブだし、振り回されるこっちの身にもなってください!

青葉は涙を流す。

青葉 八神さんはバカヤローですよ!八神さんは私の目標なんです。いまだって十分すごい人なのに、なのに……どうしてフランスなんかに行っちゃうんですか!

コウは青葉を抱きしめる。

コウ 私をもっと上手くなりたいって気持ちにさせてくれたのは青葉なんだよ。

青葉 えっ……。

コウ キービジュアルのコンペ前日の夜、頑張っている青葉を見て、「私も負けてられない」って思ったんだ。いまに満足していた私に、青葉が思い出させてくれたんだ。「私、もっと上手くなりたいんだ」って。だから私は、まだ知らない環境で、海外でたくさん勉強してもっと……上へ行くよ。

青葉は息を呑む。

コウ 私が帰ってきた時に、いまよりヘタレていたら承知しないからな!これでも期待してるんだぞ。青葉のこと……離れていてもずっと見ているから!

青葉 ……はい!見ていてください!私も八神さんのこと見ていますから!


コウはイーグルジャンプ社の看板であり、会社を、そして後輩たちを守り、導く存在だった。しかしいま、彼女は1人のデザイナーとして戦場に還ることを決意したのだ。

青葉は同じデザイナーとしてコウの気持ちを理解したのだろう。


まとめ


青葉は、コウに憧れてイーグルジャンプ社に入った。そしてコウのもとで修業を積み、成長してきた。

その青葉がコウの心と尻に火を点けた。かくしてコウはさらなる高みを目指して旅立つ。

もちろん、青葉だって負けてはいられない。


つまり2人は、いま、師弟でありながらもライバルになったのだ。


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(担当:三葉)

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