「攻撃的・暴力的なこと」を敢えて言って、相手を笑わせたり、その場の雰囲気をほぐしたりする ~映画「ラブ・アクチュアリー」の場合
◆概要
【「攻撃的・暴力的なこと」を敢えて言って、相手を笑わせたり、その場の雰囲気をほぐしたりする】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「ラブ・アクチュアリー」
▶1
本作の主要キャラの1人・デイヴィッド(40代頃の男性)。
彼は、イギリスの首相である。
デイヴィッドはいま、
・Step1:ナタリー(首相公邸のスタッフ)に密かに恋をしていた。
・Step2:うーむ……ナタリーのことが気になって仕方がない!恋人はいるのだろうか?まさか結婚しているとか?もしかして子どもがいたりして!
というわけである日のことだ。
・Step3:ナタリーと2人きりになった時に、デイヴィッドは探りを入れてみた。
・Step4:すると――ナタリーにはかつて恋人がいた。しかし相手はひどい男だった。だから別れてしまったとのことだ。
・Step5:ナタリーの表情が暗くなる「別れてよかったんです。私のことを『デブ』なんて言う人でしたから……」「『丸太みたいな太ももの女は嫌いだ』って言われて……」「最後の方は嫌なことばかりでした……」。
・Step6:落ち込むナタリー。
・Step7:デイヴィッドはどうにかして元気づけてやりたいと思った。かくして言った「……その男、首相命令で暗殺してあげようか?」。――もちろんジョークである。
・Step8:その言葉にナタリーが笑う「ありがとうございます。考えておきます」。
・Step9:デイヴィッドはさらに「特殊空軍部隊に頼むつもりだ。凄腕なんだよ。電話1本でいつでも呼べるからね!」。
▶2
ご注目いただきたいのは、「……その男、首相命令で暗殺してあげようか?」「特殊空軍部隊に頼むつもりだ。凄腕なんだよ。電話1本でいつでも呼べるからね!」というデイヴィッドのセリフである。
上述の通り、彼はナタリーを元気づけようとしているわけだが――しかしだからといって、「なんてひどい男なんだ!」だの「きみにはもっといい男がいるよ」だのとストレートに励ましてしまっては面白くない。
そこで【「攻撃的・暴力的なこと」を敢えて言って、相手を笑わせたり、その場の雰囲気をほぐしたりする】という技法の出番だ。「なんてひどい男なんだ!」「きみにはもっといい男がいるよ」を「暗殺してあげようか?」「特殊空軍部隊に頼むつもりだ」に置き換えたことで、ユニークで印象に残るセリフになったといえるだろう。