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1度ならず2度視点をひっくり返すのだ!|「この職場は地獄だ」

 こんにちは。傑作マンガを分析・研究する「21世紀マンガスタディーズ」のお時間です。

 本日取り上げるのは……こちらの作品!


大江しんいちろう「この職場は地獄だ」


大江しんいちろう「この職場は地獄だ②」

※読了時間目安:各1分


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ひっくり返すのだ★


三葉「今回は『この職場は地獄だ』と、その続編『この職場は地獄だ②』をご紹介しましょう!」

清水「はい」

三葉「いずれもたった4ページの短編なんですけど、構造が面白いですよね!

清水「『構造』というと……」

三葉「ご説明しましょう。いずれの作品も、前半2ページには、アシスタント同士の会話が描かれています。そしてまずは、先輩アシスタント・千川(②では千田になっている)が、後輩・足野に対して厳しいダメ出しをする

清水「ふむ」

三葉「しかしじつは、それが『足野を想っての厳しくも愛のある言葉』であることが明らかになる。グッとやる気を出す足野……」

清水「ええ」

三葉「一方、3~4ページ目の視点主はマンガ家・満田です。1~2ページ目とまったく同じやりとりが繰り返されますが……今度は満田のモノローグ付き。そして、千川による『一見厳しいダメ出しのようで、しかし、じつは愛のある言葉』が、満田からすれば『聞き捨てならないムチャな言動・素人考え』であることが示される

清水「そうですね」

三葉「つまりこれ、千川の発言』の見え方が2度変わっているんですよね



清水「なるほど」

三葉「たった4ページで、2度も見え方が変わる!じつにテンポがよく、最後までまったく飽きないですよねぇ!


応用しよう!例えば「意識高い系の学生と社会人」


三葉「で、本作はマンガ家とそのアシスタントの話ですが……」

清水「ええ」

三葉この構造は、そのまま別のシーンにも適用できると思うのです

清水「ほぉ」

三葉「例えば……意識高い系の学生と社会人!

清水「なるほど」

三葉「電車の中……意識高い系の学生が、そうでない学生に向かって、『会社に使われるんじゃなくてさ、自分たちが会社を使うっていう意識が重要だぜー★お前もさ、就職しないでフリーランスとか考えてみたら?』、あるいは『やっぱさ、新しい日本の価値?っていうの?バリュー?っていうの?そういうのを作っていかなきゃいけないぜー★ただ漫然と働いているヤツは総じてク★ソ』なんて話をしている。無論、彼は好意でアドバイスしているのでしょうが……」

清水「うーむ……」

三葉同じ車両に乗り合わせた社会人の心中は……みたいな」

清水「うーむ……業腹でしょうねぇ……」


もう1度ひっくり返そう★


三葉「昨今、いわゆる『物申す系』など、やや安易に感じれる『意外性を狙った短編マンガ』を見かけることがありますが……」

清水「ええ。Twitterなんかだと、『(1)わかりやすくて、(2)ちょっと意外性があって、(3)なんならスカッとするタイプの作品』って受けやすいですからね」

三葉「そうそう」

清水「最近の流行りと言えるかもしれません」

三葉「無論そういう作品もよいのですが……もうひとひねりあればもっと面白くなりそうだなぁと感じることもあります。そんな時に……本作!本作のように、もう1度ひっくり返してやるのも一案ではないかと思うのです


登場人物紹介


清水:マスター・オブ・アニメ。年100作以上のアニメを見続けて20余年。P.A.WORKS作品で最も好きなのは「SHIROBAKO」


三葉:清水とは中学からの友人。最近ハマっているのは「Summer Pockets」。Nintendo Switch版を昨日買った★

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(分析:清水、三葉 / 文、イラスト:三葉)

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