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「極端に劣ったもの」や「下品なもの」など、比較対象として持ち出した時点で失礼にあたるものと比較することで、嫌みったらしく非難したり皮肉ったりする ~映画「フォードvsフェラーリ」の場合
リー「(熱く語る)ここ5年間で、フェラーリは4度もル・マンで優勝しています!彼らに学ぶべきだ!フェラーリに!」
↓
レオ「(皮肉っぽく)フェラーリの1年間の生産量は、わが社の1日分にも及ばない」「ハハハッ。それどころか、わが社のトイレットペーパーを買うための予算の方が、フェラーリの全売上よりも大きいくらいだ」「フェラーリは何の参考にもならんよ」
◆概要
【「極端に劣ったもの」や「下品なもの」など、比較対象として持ち出した時点で失礼にあたるものと比較することで、嫌みったらしく非難したり皮肉ったりする】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「フォードvsフェラーリ」
▶1
本作の主要キャラの1人・リー(40歳頃の男性)。
彼は、アメリカの自動車メーカー「フォード」の幹部である。
フォードといえば超巨大メーカーだが、
・Step1:しかし最近は深刻な販売不振に陥っていた。一体どうすればいいのか!?
・Step2:というわけで、ある日の幹部会議でのこと。
・Step3:リーが提案した。販売数アップのためには「フォードの車 = クール」というイメージを広める必要がある。そしてそのためには、ル・マンのようなレースに出場するのがいいだろう。
・Step4:リーは熱く語った「ここ5年間で、フェラーリは4度もル・マンで優勝しています!彼らに学ぶべきだ!フェラーリに!」。
※補足:当時の状況を大雑把に整理すると「フォード社 = 巨大メーカーだが、その車は世間からダサイと思われている」、「フェラーリ社 = 弱小メーカーだが、その車は超クール。世界中の若者が憧れている」。
リーの発言に対して、
・Step5:レオ(幹部の1人)は皮肉っぽく言った「フェラーリの1年間の生産量は、わが社の1日分にも及ばない」「ハハハッ。それどころか、わが社のトイレットペーパーを買うための予算の方が、フェラーリの全売上よりも大きいくらいだ」。
・Step6:幹部たちが笑う。
・Step7:最後にレオは断言した「フェラーリは何の参考にもならんよ」。
▶2
ご注目いただきたいのは、「わが社のトイレットペーパーを買うための予算の方が、フェラーリの全売上よりも大きいくらいだ」というレオのセリフである。
これは必要不可欠なセリフではない。1つ前の「フェラーリの1年間の生産量は、わが社の1日分にも及ばない」や、1つ後の「フェラーリは何の参考にもならんよ」があれば十分だ。しかし――面白みはない。
そこで【「極端に劣ったもの」や「下品なもの」など、比較対象として持ち出した時点で失礼にあたるものと比較することで、嫌みったらしく非難したり皮肉ったりする】という技法の出番だ。「フォード社のトイレットペーパーを買う予算」と「フェラーリ社の全売上」をわざわざ比較したことで、悪趣味で、そしてユニークなセリフになったといえるだろう。
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