堅苦しい会話シーン→傍で眠っている人のいびきが非常にうるさくて、しかも汚い
◆概要
【堅苦しい会話シーン→傍で眠っている人のいびきが非常にうるさくて、しかも汚い】は「物語を進める上で必須だが、読者・鑑賞者が退屈しそうなシーン」を面白くするためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:ドラマ「トリック」(第2話)
▶1
本作の主人公は、山田。
20歳頃の女性である。
・Step1:ある日ひょんなことから……山田は、上田(男性、30歳頃、物理学者)と共に美和子(女性、25歳頃)を助けることになった。
・Step2:美和子は、怪しい宗教団体に半ば洗脳され、軟禁状態にあった。しかしどうにかして教団を抜け出した3人。ひとまず、親切な猟師に匿ってもらった。
・Step3:夜明け頃。疲労困憊したのだろう、美和子は熟睡している。一方、山田と上田はその隣で善後策を話し合う。曰く、
山田「ねぇ、上田さん。警察が相手にしてくれないってことは、あいつらのインチキをはっきり暴かない限り、私たち、助からないってことですよね?」
上田「……」
山田「だって、いつまでも逃げ続けるわけにはいかないじゃないですか。ビックマザーは、『自分のもとを逃げ出した者には必ず呪いが訪れる』と言った。つまり、美和子さんにも近い内に呪いが訪れる。訪れなければあいつらの格好がつかない。呪いに見せかける何らかの仕掛けを使って、美和子さんを襲うはず」
上田「きみは美和子さんを囮にしようってのか?」
山田「囮って……」
上田「だってそうだろ?いくらなんでもそんなこと……」
▶2
ご注目いただきたいのは、Step3の山田と上田の会話である。
制作者の視点から言えばこれは、
・いま3人がどのような状況に置かれているか
・どのような危険が迫っているか
・これからどうすればいいか
といったことをキャラのセリフを通じて整理し、鑑賞者が置いてきぼりになるのを防ぐためのシーンだ。
つまりは状況説明シーン。
はっきり言って面白いシーンではない。だって、キャラが堅苦しい会話をしているだけなのだから。一歩間違えれば眠くなってしまうだろう。
▶3
しかし本作は巧い。
というのもじつはこのシーン、山田と上田の傍で眠っている美和子はいびきをかいているのだが……これが普通のいびきではないのだ!
ずばり、非常にうるさい。大音量だ。その上「ゴー!グガー!ガー!ンガ!!」と大変に汚らしい。美和子はいわゆる薄幸の美人といった感じの女性だが、そんな彼女にはまったく似つかわしくないいびきである。
多くの鑑賞者は「えっ!?」と驚き、思わず噴き出してしまっただろう。
そして驚いたり笑ったりしている内に、この状況説明シーンは終わるのである。ゆえに退屈せずに済むというわけだ。
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