比喩を使って、決めゼリフを作ったり大団円感を醸し出したりする ~映画「スターリンの葬送狂騒曲」の場合
◆概要
【比喩を使って、決めゼリフを作ったり大団円感を醸し出したりする】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「スターリンの葬送狂騒曲」
▶1
本作の主要キャラの1人・ベリヤ(50代頃の男性)。
彼は、ソ連の政治家であり、最高権力者スターリンの側近の1人である。
なお、でっぷり太り、いかにも悪党という感じの見た目をしている。
1953年、
・Step1:最高権力者スターリンが死亡。
・Step2:かくして幹部たちの権力闘争が始まった。具体的には、ベリヤ派とフルシチョフ派の争いである。
・Step3:一時はベリヤが勝利したかと思われた。だが、彼はあまりにも多くの者から恨まれ、そして恐れられていた。「あいつに権力を握られたら大変だ」「あいつはいまの内に始末した方がいい」という機運が高まる。
・Step4:やがて幹部たちはフルシチョフを中心に結束、ベリヤを抹殺することになった。ジューコフ(ソ連軍の最高司令官)もその一員である。
というわけで、
・Step5:ある日のことだ。ジューコフが、待機していた部下に合図を出した。ベリヤ抹殺作戦を開始する!
・Step6:合図を受けた部下は仲間たちに言った「決行だ!豚を料理しにいくぞ!」。
・Step7:その後、作戦は速やかに実行に移された。ベリヤは国家反逆罪などの罪状で軍に逮捕され、名目だけの裁判を経て、即銃殺された。そしてこれを機にフルシチョフはソ連の最高権力者に上り詰めるのだった。
▶2
ご注目いただきたいのは、「決行だ!豚を料理しにいくぞ!」という部下のセリフである。
要するに「作戦開始だ!さぁベリヤを捕まえにいくぞ!」と仲間たちに声をかけたわけだが――ストレートにそう言ってしまっては面白くない。
そこで【比喩を使って、決めゼリフを作ったり大団円感を醸し出したりする】という技法の出番だ。ベリヤが肥満体であることから彼を「豚」に喩え、そして「逮捕・処刑」を「料理」と表現したことで、クライマックスに相応しい印象的な決めゼリフになったといえるだろう。