「作中に繰り返し氷が登場する→氷は次第に溶けていく」という演出によって、そのキャラの緊張や恐怖が薄れ、仲間と打ち解けたことを暗示する ~アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」の場合
◆概要
【「作中に繰り返し氷が登場する→氷は次第に溶けていく」という演出によって、そのキャラの緊張や恐怖が薄れ、仲間と打ち解けたことを暗示する】は「キャラの感情などを暗示する」ためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」(第1-2話)
▶1
本作の主人公は、後藤ひとり。
ニックネームは「ぼっち」である。
ぼっちは、
・Step1:幼い頃から対人コミュニケーションが苦手だった。いわゆる「コミュ障」であり、加えて「陰キャ」。友達はいない。人と目を合わせることもままならない。いつも1人ぼっちだった。
・Step2:ところが高校入学後、ひょんなことから初対面の虹夏(ドラム担当)、リョウ(ベース担当)とバンドを組むことになった。
・Step3:さらに、2人と同じくライブハウスでバイトを始めた。
かくしてぼっちの人生は大きく動き始めたわけだが、
・Step4:とはいえ、生来のコミュ障っぷりがそう易々と改善されるはずがない。ぼっちはすぐに腰が引ける。ネガティブ思考に囚われる。緊張のあまり訳のわからぬ言動を取る。第2話全体を通じて、ぼっちはいろいろとやらかす。
・Step5:だが、心優しい虹夏やリョウ、ライブハウスの店長のおかげで、ぼっちは次第にバンドとバイトに馴染んでいった。
・Step6:そして第2話終盤には、「何とか1日乗り切ったー!意外とやっていけそうな気がする!明日も頑張るぞー!!」と満面の笑みを浮かべられるところまで成長を遂げた。
▶2
上述の通り、第2話は「ぼっちが虹夏やリョウと打ち解ける→さらに、彼女たちのおかげでバイトにも馴染んでいく」というエピソードである。
ご注目いただきたいのは、第2話全体を通じて繰り返し「氷」が登場するという点だ。
・【1】冒頭:初バイトの前夜、ぼっちは自宅のバスタブに水を張り、大量の氷をぶちこんだ。そしてそこに浸かる。ぼっちの顔が青くなる。まるで死人である。……バイトをばっくれるべく、風邪を引いて熱を出そうという計画だ。しかし結局発熱することはなかった。ぼっちは仕方なくバイトに向かった。
・【2】序盤:虹夏やリョウと他愛もない会話をするぼっち。途中、ジュースの入ったコップの中から「パリッ」という音がした。ジュースや室温によって温められ、中の氷が割れたらしい。
・【3】終盤:初バイト中、ぼっちは勇気を振り絞って接客(飲み物の注文を取り、それを用意して手渡す)に挑む。コップに氷を入れ、ジュースを注ぐ。ジュースや室温に温められた氷が「パリパリッ」と割れた。
・【4】さらにその後:虹夏たちのサポートを受けて、初バイトを乗り切ったぼっち。彼女は「何とか1日乗り切ったー!意外とやっていけそうな気がする!明日も頑張るぞー!!」と満面の笑みで帰っていった。一方、虹夏とリョウはライブハウスに残り、雑談する。この時、テーブルの上には空っぽのコップ。いや、コップの底には溶けて小さくなった氷が3つだけ残っているのが見える。
・【5】ラストシーン:その日の夜。ぼっちが発熱する。ぼっちは涙目で「いっ、いま頃熱が……」。そう、タイミング悪くいまさら風邪を引いてしまったらしい。
氷は、ぼっちの「緊張・怯え・恐怖」を象徴するものだと考えられる。それが第2話全体を通じて溶けていく……!
しかも、1日の終わりには「コップの中に小さな氷が3つ」。ぼっちの緊張・怯え・恐怖が薄れ、ぼっち、虹夏、リョウの3人が親しくなったことを意味しているのだろう。
さらに、ラストシーンでぼっちは発熱する。緊張・怯え・恐怖が薄れると同時に、彼女の「やる気・情熱」に火がついたことを示していると解釈できそうだ。
◆他のアイデアも見る👀
この記事が参加している募集
最後までご覧いただきありがとうございます! 頂戴したサポートはすべてコンテンツ制作に使います!