大事件や大問題を、「ほんの○○だよ」「ただの○○さ」と取るに足りないことのように語る ~映画「ラブ・アクチュアリー」の場合
◆概要
【大事件や大問題を、「ほんの○○だよ」「ただの○○さ」と取るに足りないことのように語る】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「ラブ・アクチュアリー」
▶1
本作の主要キャラの1人・ダニエル(50歳頃の男性)。
彼は妻に先立たれ、いまはサム(10歳の息子)と2人で暮らしている。
サムは、
・Step1:同級生のジョアンナに片思いしていた。まだ幼いながら、彼は真剣だ。
・Step2:ある日、サムが叫んだ「閃いた!」。曰く「女って皆ミュージシャンが好きなんでしょ?」「ミュージシャンってだけでモテる!」「クリスマスコンサートがあるんだ。ジョアンナも出る。僕もバンドに入って格好いい演奏をしてみせればいいんだよ!ジョアンナが振り向いてくれるかも!」。
・Step3:そして彼は、ダニエルに訊いた「どう思う?」。
・Step4:ダニエルはうなずく「それは名案だと思う!すっごくいい作戦だと思うけど、ただ……ちょっと1つだけ小さな問題があるんじゃないかな?」。
・Step5:サムは即答する「僕が楽器を弾けないってこと?」。
・Step6:ダニエルは「その通り」。
・Step7:ところがサムは「そんなのどうにでもなるって!」と言って、すぐにドラムの練習を開始、めきめき上達していった。恋は偉大である。
▶2
ご注目いただきたいのは、「すっごくいい作戦だと思うけど、ただ……ちょっと1つだけ小さな問題があるんじゃないかな?」というダニエルのセリフである。
格好いい演奏でもって女の子を振り向かせようというにもかかわらず、サムは楽器を弾けない。どう考えても大問題だ。致命的問題だ。本来なら「そりゃ無理だろ!だってお前、楽器を弾けないじゃないか」と呆れてしかるべきところだが――ダニエルは「ちょっと1つだけ小さな問題がある」と言った。
これがいい。
第1に、「それは『小さな問題』じゃないだろ!(笑)」という面白さがある。
第2に、「ただの子どもの思いつきかもしれない。しかしだからといってバカにしてはいけない。否定してはいけない。自分で考えること自体が大切なのだ。サムの考えを尊重しよう」というダニエルの想いが、つまりは彼が子ども想いの立派な大人であることが伝わってくる。