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百裕(ひゃく・ひろし)
2024年9月5日 21:00
先日、何かの記念式典があった。自分も出席することになっていたから事前にウェブから手続きすると、じきに受付用のQRコードが送られて来た。コードの下に、ビジネスフォーマルで来るようにとの注意書きがある。上着とネクタイがいるということだ。今時珍しいことを云うものだと感心しながら、スーツとネクタイを用意した。 会場は遠方である。パーティもあると云うので新幹線で行った。 移動中にPCで事務処理などを
2024年8月31日 17:19
二十年ばかり前、職場の人間関係が縺れたおかげで随分困った。 十名足らずの小さな人材派遣会社だった。こんなに小さな中でいがみ合っているのでは、先も知れている。果たして、得意先と結託して同業他社へ移る者が二人現れた。会社はそれで大いに傾いた。 ある時、帰宅した後で社長から電話があった。「会社がこういう状態だから、冬のボーナスを出せそうにないの」 社長は女性である。いかにも申し訳なさそうな調
2024年8月29日 12:47
十数年前のある時、倉庫が人手不足で困っていたから、昼食後の腹ごなしも兼ねて小木さんと出荷作業を手伝った。 小木さんはもうじき定年を迎えるベテラン営業マンだった。常日頃から酔っ払ったような事を云って場を和ませ、この人がいれば大概の事は何とかなるだろうという心持ちにさせるから、内でも外でも随分好かれていたように思う。「よぉし、パッパパッパとやってしまおう」 小木さんはそう言って、ぷぅと放屁し
2024年8月23日 22:17
パスタ屋の店長として、最後に担当したのは川崎の新規オープンだった。思うところあって、この店を落ち着かせたら辞めようと、赴任前から密かに決めていた。 行き違いからパートさんがごっそり辞めてしまったり、深夜帯の片腕と見込んでいた者が人間関係のトラブルで辞めてしまったりと苦労はしたけれど、一年がかりで万全の体制が出来上がった。 これで暫くは楽にやれそうだと思った途端に「そう云えば、辞めるんだった」
2024年8月22日 20:00
派遣屋の仕事をしていた時、求人広告のアイキャッチにブルース・リーと千葉真一風の人物を描いてくれと広告屋に云ったことがある。 ブルースも真一も仕事内容とは関係ない。冗談半分で云ったのである。きっとそれらしき要素を含みながらあんまり似てないのを出してくるだろうと思っていたら、随分そっくりに描かれたゲラが届いた。 ブルースは黄色いつなぎを着て構えている。真一は白いスーツと黒いシャツを着て不敵な笑み