2021年の日記集:トウモロコシの便り

【8月6日】

今年も、トウモロコシが自宅に届いた。
大学4年生の頃、働いていた北軽井沢のトウモロコシ畑から。

「てつー!元気にしてる?」

そこではアルバイト初日にあだ名をつけられる。
千と千尋の神隠しみたいだなと、安直に思う。

私は、笑い飯のてつおに似ているらしく、てつおになった。
(他にアルバイトは「パク」「みつを」「ランねえちゃん」等がいて、直売所で名前を呼び合う光景は混沌としていた。)

働いていたのは6年前、2015年の夏のたった1か月間。
けれど、卒業してからもオーナー夫婦は毎年旅行やご飯に連れて行ってくれた。コロナが蔓延するまでは。

私も第二の父母のように思っている。

...

「なかなか、東京に行けなくてごめんね」
それに続いて、お母さんはこう言った。

「東京とこっちだと、当たり前が違うから。私たちはきっと間違った振る舞いをしてしまう」

北軽井沢は軽井沢から車で40分程山を登った先の別荘地、人の少ない地域。
観光客が減った痛手はあるが、現在でも地元民の生活自体に変化は少ないようだ。

それを自覚して「大丈夫だって、今まで通りで」と押し付けずに、一歩引けるということが凄い。 色々な考え方があることを尊重してくれる。
違いはあれども、間違いも正しいもないのに。

東京の深刻な状況を伝えても、真面目に聞いて信じてくれるし、受け止めてくれる。だから何でも話せた。自分も、歳を重ねてもこうありたいと思う。

...

「苦しいこともあると思うけど、一緒にがんばろうね」

数年前から「がんばってね」が「一緒にがんばろうね」に変わったこと。
意図的なのか無意識なのかはわからないけれど、私はとても嬉しい。

※この記事は、過去にメンバーシップ内の掲示板に投稿していたものを再編集したものです。

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