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【お立ち寄り時間3分】雨の日には冷えたスプーンを一あの歯はどこへ旅にでたのか一

夫は、歯が弱い。
とある日は、仕事帰りに一杯ぐらいの感じで、抜歯。別の日は、不慮の事故で、歯が折れて、あごまで腫れる大惨事、とエピソードが尽きない。

だからだろうか。
夫は、歯を丁寧に、我が子を扱うかのように磨く。時間があれば、フロスもちゃんとする。

歯磨きの歴史は、奥深い。
『歯みがき』が始まったのは、人類が火を使いはじめた頃からと言われている。加熱調理した食材だと、歯の表面に食べかすが残りやすいから、だそう。

初代、『歯ブラシ』は、歯木(しぼく)と言うもので、お釈迦さまが広めたという。禊の一種で、礼拝の前に、身を清めてから、との考えから広まったそうだ。中には、お弟子さんたちの口臭に苦慮したから、なんて記述も見られる。 

そして、『歯磨き粉』のはしりは、江戸時代から。江戸っ子がお洒落の一環で、女の人にモテるべく、使い始めたそうだ。白色は、七難隠す、という言葉があるように、いつの時代も『白い歯』は、不動の憧れなのかもしれない。

そんな私も、現在、『白い歯』を目指して、邁進中だ。夫とは異なり、歯が丈夫で、大人の歯になってからは、1本も虫歯がない。そのせいか、殆ど歯医者さんに縁がなかった。

大きく意識が変わったのは、妊娠してからだ。
歯周病だと、流産や早産の確率が高くなる、という報告があり、意識して『丁寧』に歯を磨くようになった。しかし、つわりが酷くなり、歯ブラシを口に入れるだけで、盛大にえずく日々が続いた。

彼の出産後、改めて鏡を見ると、そこには、白い歯に複数のシミがあることに気がついた。些か、歯を見せて笑うのが、億劫になった。

「もう一度、思いっきり笑いたい」

そんな強い気持ちから、口腔ケアを本格的に始めようと決意した。産後、彼を連れての歯医者さんは、時間的にも、体力的にも厳しいことから、自宅ケア、歯磨き粉を変えることから始めた。

最初は、歯磨き粉だけで変わるの?と、疑心暗鬼だったが、1週間、1か月、3か月、と地道に続けてみた。ケアを続けて半年が経った今は、前歯のシミは、凝視しないと分からない程となった。達成感と喜びで、胸がいっぱいだった。

歯のケアは、頑張った結果が目に見えてわかりやすい。また、初期投資も安価のため、取り組みやすく、何よりも楽しい。だって、損失なし、頑張った分だけ、リターンが満載なんだもの。
これが『投歯』か…と鏡の前で、1人、ニンマリした。落ち着いたら、是非、歯医者さんにも通いたい。

私がニマニマしている頃、彼にも歯が生えてきた。産まれて初めての歯が、ひょっこりと顔を出した。乳歯の子どもだ。至極、可愛い。

毎日、観察していると、日々、少しずつ見える部分が大きくなり、『歯』らしくなってくる。
『お食い初め』も、『歯固め石』と言って、石のように丈夫な歯で、長生きしますように…との願いが込められる。

中央にあるのが、『歯固め石』

年『齢』に、『歯』と言う文字が、入っているように、歯は、寿命と深く結びついており、『歯』と『生きること』は、切っても切り離せない。

『歯』は、『生きること』と繋がっている。

美味しいものを食べる時、丈夫な歯が必要不可欠で、そのために、日々の歯磨きは欠かせない。
円滑に話をするためには、口臭ケアもしておきたい。あのお釈迦さまも、気にするくらいですし。

私たちは、『生』を『歯』で食している。

そろそろ、本格的にマスクも取れるだろう。
誰かと食事をする、話をする時に、思いっきり歯を見せて笑える日も近い。

そんな時は、『白い歯』で、躊躇なく笑いたい。


そういえば、ふと思う。
私の乳歯は、何処へ旅に出たのだろう。
屋根の上か、はたまた、タンスの奥深くか。

実家に帰ったら、聞いてみよう。
「どこかしらね…」と、困惑する声がもう聞こえるけれど。

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