キャスケット
以前、クリアレンズのサングラスを常用していると書いたが……もう一つ、僕にとって帽子は欠かせない。
なにせ、毛質が細くて癖毛……ついワックスなど付けていると、朝、起きてみれば髪が突っ立っていて、すぐは修正がきかない。
かてて加えて、散髪はカミソリでジョキジョキ……鏡も見ずに切っているので……惨憺たるものなのだ。
床屋の、あの姿勢を固定される気分が一時といえども不快なので……ここ何年も扉を排したことはない。
取り合えず、寝起きそのままのざんばら髪……人に不快を与えるだろうことを考慮すると……帽子で誤魔化すほか選択肢はない。
これまでも色んな帽子に世話になった。ワッチキャップとか、一時はハットが気に入っていたし……中東のゲリラみたいにシュマグを愛用していた時期もあった。
ここ最近は……バイト先でも通用するキャップ系……それでも野球帽みたいなのではなく、キャスケットを愛用している。黒の、ニューヨークハットというメーカーである。
夏場でも、素材が麻だと涼しくて、被っているのを忘れてしまうほどだ。
しかし、汗だくで帰宅すると、帽子は当然脱ぐわけだが……本来の癖と、帽子による圧迫で……これも叉、見るも無惨である。
結果……カチューシャを使うか……夏本番の時は、タオルを巻いていたこともあった。
しかし……ふと思い返してみると……僕は本来帽子は好きではなかったらしい。
小学生時代など、野球帽を被っている友達も多くいたと思うが……僕自身が被っていた記憶はあまりない。中学……特に高校に上がると、あのダサい学帽……とくに僕の通っていた高校は二本の白線を縫い込むのが決まりで、いっそう垢抜けない。
結果……帽子とは被るものではなく手に持つものと心得……校門を潜る時だけ、頭にチョコンと載せていたはず。
なにせ、校門ではいつも教師が張っていて、服装の乱れ等を監視していたのだから……
……と、色々思い返してみたのだが……その後、二十歳を過ぎてからも……僕は全く帽子には無縁であったはず。
と、言うことは……なに、案外細い毛質ながらも、それなりに素直だったようだ。
もしかしたら……毛質のヒネクレ具合とは、性格とリンクするのかも知れない。
かく考えると、思い当たるフシがないでもない。
そう。文学に目覚め……性格がネジクレ、捻くれるにつれて、髪の毛も癖を増したのだろうか?
已んぬる哉……今更、素直な性格などに立ち戻ることは出来そうにない。
結果、帽子は……当面僕の必需品になり続けるだろう……