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喫煙マナー
根っからの愛煙家ではあるが、ここ何年か……外出時には煙草は持参しない。
確かに、以前は公園あたりにも灰皿が設置されていたが、この所、ほぼ全て撤去されたようだ。一服していたスポットにあっても、即吸いたいとも思わず……家に戻ってからゆっくり味わいたいという思いの方が強い。
てっきり、煙草には一般に信じられているほどの中毒性はないのかも知れない。
例えば、かってはバイト先などでも、休み時間……吸える場所を探して一服していたのが、今ではかえってそんな卑屈な真似などしたいとも思わない。
と同時に、我ながら身勝手だなぁ……と思えることがある。
そう。煙草は高校の頃から普通に吸っていたのだが、当時は愛煙家に対して世間の風当たりなど弱く、いっそ図太く構えていたものだ。
確か、予備校あたりにも灰皿は設置されていたし、現に一服しながら講義を聞くというながめもあったらしい。
歩き煙草など当然のけしきだったし、吸い殻の投げ捨てなどもあまり非難されなかったようだ。たぶん、カッコをつける一つの重要なアイテムだったのだろう。
何時ごろから嫌煙が言われ出したかは詳らかではないが、今では、表で煙草を吸うこと自体……ちょっとした軽犯罪という気分にもなってしまう。
確かに、人に迷惑を及ぼすような場所での喫煙は、どう考えても非難されてしかるべきなのに……かっては、これぞ男子のステータスと信じていたのだから我ながら情けない。
実際の所、外出先での喫煙を自主規制してみると……かっての自分さながらの喫煙のマナーの悪さに、腹立ちすら覚えてしまうのだ。
指に挟んだ煙草は、小さな子供に触れれば火傷の危険もある。側溝への吸い殻の投げ捨て等々……
さすがに、居酒屋での煙草は、未だに許容範囲と信じたいのだが……caféあたりでは、今や禁煙は常識だろう。
そうは言っても、やはり紫煙立ち込めるジャズ喫茶などは、今でも懐かしい。せっかく代々木の予備校に行かせてもらっていたのに、つい新宿あたりまで足をのばして聞いたコルトレーンは、特別の味わいがあった。
代わって、今では我が居室は始終紫煙の煙幕の中にあって……なぜかアニメに多い、くわえ煙草のキャラに声援を送るの日々である。
そして、こっそりと我が心の師である安部公房の言葉を呪文として唱えるのだ。
煙草とは、思考工場の煙突である。
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