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ポテトフライ
この正月、ひたすらアニメを見ながら、ウイスキー(普段は焼酎)の摘みとしてチョコレートとポテチを頬張っていた。
身体に悪いとか、そんなことは一切頓着しない。知識なんぞというお節介よりは、肉体の素朴な欲求にこそ応えたいというのが信条なのだ。
なぜか好みがガキじみていて、チーズとかサキイカなんぞよりも、俄然「お菓子」系選択してしまう。
チョコレートに関しても、大人むきのビターな奴ではなく……ミルクチョコの方がホッとする。贔屓にしているのは「明治」の、在り来たりの奴である。
ポテチは、「カルビー」と「湖池屋」が代表で、お菓子寄りは断然「カルビー」で……以前はこれを好んでいたのだが……最近は「湖池屋」に落ち着いている。
こっちは「お菓子」と言うより、純粋に「ポテト」に近いと感じている。
と同時に……ちょっと懐かしさも漂わせてくれるのだ。
思えば、スナック系は昨今では色々と種類も豊富だが……僕的に遡ってみれば……そう、「ポテチ」と同時に、「ポップコーン」は存在感があったと思う。
我が家の場合……無論、幼少の頃だが……家族は「ポップコーン」派で……「ポテチ」贔屓は僕だけだったようだ。
うっすらとした記憶なのだが……昔々、「ポップコーン」と言えば、一般の袋入りの他に……今では全く見かけないが……コーンの粒をラードみたいな油で固めたような商品があったと思う。業務用なのかも知れないが……
これをフライパンに入れて、蓋をする……しばらくすると、中でポンポンと弾ける音が鳴り、この音が止むと出来上がりである。
黄色かった粒が、白い綿のような花を咲かせ……嵩もビックリするほど増しているのだ。
この行程だけは面白かったのだが……実際は、ちょっとしか摘まなかったはず。
一方、「ポテチ」の方だが……僕がガキの頃は、所謂「スナック」と言うよりは、副菜として食卓に上がっていたものだ。
マックのポテトみたいに細長ではなく、単純な輪切りながら、ポテチよりも厚く……油で揚げた後も……皿に敷いた半紙みたいな紙の上にドバッと乗せるのだが……食感はパリパリではなく、「しんなり」していたと思うが、僕はこれが大好物であった。
もちろん、今でも、これを好んで作る向きもあるだろうが……
ふと目を閉じて……時を遡ってみると……僕はこの「ポテトフライ」を人生の節目節目に食べていたような気がするのだ。
誕生日だったり、卒業式だったり、テストで途轍もなく悪い評点を下された時、女の子にときめいた時、……ジャズコンサートの前日、……etc.
なぜ、他の食い物ではなく「ポテトフライ」なのか?
思えば……「涙とともにパンを食べた者でなければ、人生の本当の味はわからない」という有名に言葉がある。
「パン」を「ポテトフライ」に置き換えてみるならば……僕が、愛する少女を永遠に失った時食べたのが……「ポテトフライ」だったはず。
もとより……僕は今、涙と共に「ポテチ」を頬張っているわけではない。
そう。「時」というものは単純に一直線に流れるものではなく……クネリ、曲がり、螺旋を描き……過去と現在が、手で触れられるほどに接近する瞬間もある。
僕はたぶん……愛する少女が「夢」から「現実」に舞い降りてくれた、その瞬間に浸りたくて……「ポテチ」を摘んでいるのかも知れないのだ。
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