マフラーとストール

　マフラーやストールの類いは大好きで、昔から首に巻いている。

　痩せの、首もヒョロッとしているので、巻きものは必須なのだ。

　あまり記憶にはないが、小学生の頃からおかんにマフラーを巻かされていたと思う。

　とは言え、ファッション的にカッコいいと認識したのは中学の時で……毎度登場する順子さんの巻き方を見てからのことだ。
　今から言えば、どうということのない……ただ巻き付けて前後に垂らすというていのものだったが……実はこの巻き方、学校では禁止されていたのだ。
　学校というのはおかしなもので、カッコ良かったり、似合ったりといったファッションを殊更嫌い、ダサい、ありきたりのスタイルを推奨するらしい。

　いずれにしても、順子さんは成績も優秀ながら、案外素直とはズレていて……禁止されようが、断固自分のスタイルに固執する質だったのだ。
　なにせ、いつも遅刻ギリギリに校門に走り込んでくるのだが……首のマフラーがヒラヒラと舞い、なんともエレガントであった。

　マフラーなんぞ、所詮、いっそウザい防寒具の一つと認識していたのが……ファッョンの重要なアイテムと知らしめてくれたのだろう。

　かくして時も流れ……僕は、少しでも肌寒くなると首に何か巻いていないと落ち着かない。一時はシュマグを使っていたが……なんかダサい感じがして……

　当初は、当たり前の普通のマフラーであったが……特別凝ることもなく、グルグル巻くだけという大雑把であった。
　流石に、「順子さん巻き」は子供っぽいので……実践はしなかったが……

　それでも……一般に見受けられる「ワンループ巻き」……と言うのか、二つに折って首に巻いてループに通すやつ……あれだけは断固敬遠してきたのだ。
　と言うのも、我が家は借地なので……定期的に地主のおとうさんが地代の徴収に訪れていたのだが……その時のスタイル……要はお金を入れる垢抜けないバッグと同時、冬は必ずマフラーを先の「ワンループ巻き」にしていたのだ。

　巷の「ワンループ巻き」を見ると、どうしてもいかにも昭和レトロ的な地主のおとさんを連想してしまって、自らこの巻き方をする気にはなれない。

　ついでに、僕は……本音では、首が寒くてもバイトに行く時はマフラーは装着したくないのだ。
　こじつければ、僕にとってマフラーは防寒という以上に（順子さんの影響かな？）、ファッションアイテムに近く……思えば、随分昔のことだが、シルバーアクセが流行っていた時も、バイトにはこれを外して出勤したものである。
　なんて言うのか……バイトでの労働者としての僕は、要するに、「僕ではない」……という意識らしい。　とは言え……やはり寒いので、巻き付けはするが……(^o^)

　まあ、それはさて置き……

　仕事が休みになると……バイトのことなど一切忘れ、「遊び」と「夢」の世界に没入するわけたが……ここに至って、本来のマフラーの出番である。

　とは言え、この所僕が愛用しているのは、所謂「マフラー」ではなく、大判の「 ストール」である。
　 思えば、この ストール、かっては 女子の 専有と いう イメージが強かったが、昨今では男子でもよく見かけるようになった。
　もとより「カシミア」なんか買える身分ではなく安物ではあるが、色は黒の 一択……「ミラノ巻き」にしてチャリに 跨がれば、ありふれた日常のけしきも、いつしか夢の通い路にぶちあたるけはいも感じられるのだ。

　あんがい……時空を超越したところ、つい向こうの角から、あの順子さんがマフラーを靡かせながら走り出てくるかもしれないのだ……