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ワレットチェーン

 キャッシュレスが当然の世としあれば、財布を持ち歩かない人もいるらしい。

 僕とて、スーパーやコンビニの買い物は、スマホ決済だが……煙草などは、馴染の煙草屋での現金払いに徹している。なにせ、看板娘(おばさん?)が二人もいるのだから。

 ついては財布のみならず……ワレットチェーンも長年愛用している。つい見回すと……今どきワレットチェーンをぶら下げている人は少ない。すでに流行遅れの、ダサいアイテムの範疇らしい。女子受けは最低らしく、確かに……昔々に流行ったクロムハーツのシルバーなど見かけると——大抵はオッサン—— 流石にダサいとは思う。

 僕は昔から、そう、シルバーアクセが流行っていた時代でも、チェーンに関してはシルバーを敬遠していたはず。たぶん、ネックレスやバングルとは違って、オシャレの小物としてよりは実利的な「スリの予防」といった意味合いであった。

 今使っているチェーンも当然シルバーではなく、長年の愛用で錆びている。

 何気なく、新しいチェーンでもとネットを調べていたら……やれやれ、「ダサい ダサい」の大合唱であった。

 もとより、そんなコトを気に留めるほど純情でもないが……どうも世の中、AかBかの二項対立が未だにのさばっているように思えるのだ。

 確かに、二項対立を金科玉条としておけば生きやすい。ダサいと言われるファッションや言動を控えることで、女子受けも上がり、カッコ良くなれる。
 はっきり言ってお笑い草だが……一端そう思い込んでしまえば、それが正義になってしまうらしい。

 ファッションなどは顕著だろう。今はどうか知らないが……Tシャツなど、ダボダボのデカイのを着るのが流行っている。本来の体型などどうでもいいのだろうか?
 僕は、かかる傾向が闊歩始めた頃、かく思ったものである。

 あれって、難民ファッションだろ……

 そう。サイズが合わなくても、取り合えず支給された服を着ているよう……と言う意味だある。

 しかし、やはり二項対立のプレッシャーは凄まじい。僕とて、今どきチビTを着ることはなく、知らず大きいサイズを選んでいる。

 僕のように、人目など糞を食らえの人間でもそうなのだから……仲間の目を極端の恐れる高校生あたりだと、仲間はずれを恐れ……懸命に「ダサくない」と言われる状況を模索し続けるのだろう。

 デリダの「脱構築」をここで持ち出すつもりもないが……いいかげん二項対立のファシズムからは抜け出して欲しいものだ。

 思えば、僕もファッションに於いてはちょっぴり「脱構築」かも知れない。

 大きめのTシャツを被りながらも、すでに廃れたウォレットチェーンをぶら下げているのだから……     

貧乏人です。創作費用に充てたいので……よろしくお願いいたします。