The Beatlesの新曲
The Beatlesの最後の新曲「Now And Then」が、話題になっている。
やはり、John Lennonの、哀愁漂う歌声は懐かしい。
もしかしたら、The Beatlesを耳に育ってこなかった若い人達には、この古色蒼然たる伝説のバンドが、かえって新鮮に聞こえたかも知れない。
なにせ、全英一位に輝いてしまったのだ!
改めての、The Beatlesの再評価を期待して、ちと昔の曲も聴いてみたくなった。
初期にも名曲は沢山あるが、僕がふと聴きたくなったのは、やはり名高いアルバムの一つである「Rubber Soul」という奴である。たぶん「rubber sole(スニーカー)」と引っかけた駄洒落なのだろうが……取り合えず愚直に直訳すれば、「ゴムの魂」……ということになるだろう。
そう。英語では「rubberneck」という表現があるらしい。この言葉は高校時代、たまたま英語の成績の良い生徒を集めたクラスにあって、かなり流暢な本場の英語を話す教師から教えられたのだが……たぶん、詮索好き、あるいは強い好奇心を表す言いかたなのだろうか? ……最近では、あまり耳にしないが……
徒し事さておき……
僕は、この「ラバー・ソウル」を通して聞いいてみて、つい教えられることがあった。
当時のThe Beatlesは飛ぶ鳥も落とす勢いで、俺達はどんなタイプの音楽もこなしてやるぜ!……といった意気込みがあったのだろう。
インド風、シャンソン風、ジャズ風、バロック風と多彩である。
物書きの端くれとして、僕はこのアルバムを、あらゆる文体、そしてテーマを鏤めた短編小説集と理解してしまうのだ。
思えば、僕たちは馬齢を重ねるに従い、可能性の意気込みを徐々に失い、ついにはたった一つの「死」という不可避の奈落こそ、残された最後の揺り籠と意識してしまうらしい。
そして、その過程に於いて、高飛車の可能性を蔑み、死臭漂う保守の泥沼に落ち込んでしまうのだ。
10代の少年少女達の無謀を「無知」と断じ、未来の誕生の曙光をさえ「あり得ない」という、苦笑と蔑視の泥土に投げ込もうとする……
思い当たるフシはないだろうか?
今の自分には理解出来ない……いっそ不快を催す新奇の事態に対して、「否」の、嫉妬の一言を発したことが……
僕は……恥ずかしながら……「確かに」と答えるしかない……
しかし、僕はThe Beatlesの「ラバー・ソウル」を聞くと……たちまちとして、そんな自分が悲しくなってしまうのだ。
今再び……仮面ライダーやウルトラマンへの可能性を地平に夢見ていた少年時代に戻ることも、一興なのだ。
The Beatlesの「ラハー・ソウル」は……僕に、今生きているのなら……君はスーパーマンにもなれる……というメッセージを送り込んでくれるのだ!
生きているということは、決して辛いことではない。辛いと感じるのは、辛さを楽しもうとしない……老いた、既に弾性を失った「ラバー」ではないのだろうか?
弾性を失った「ラバー」は、もはやゴムではないはずだ……
真にラバーな心に、たぶん皴はないだろう……
新曲「Now And Then」には次の歌詞がある……
And now and then (時にはあるんじゃないかな)
If we must start again(初めっからやり直さなきゃいけないとして)
Well, we will know for sure(そう、はっきり分かってるさ)
That I will love you(僕が君を愛する宿命だってことが……)