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犬に吠えられる

 猫好きを表明しているからと言って、別に犬が嫌いとか憎いと思っているわけでもないのに、やはり相性が悪いのか……よく吠えられる。

 いや、吠えられるどころか、先だってあわや噛み付かれかけたのだ。

 バイト帰り、ついすれ違った、毛むくじゃらのでかい犬……何という犬種かは知らないが、出し抜けに飛び掛かってきた。連れていた男性が慌ててリードを引き、僕にして身を翻したものの、持っていたバッグがなければ、もしかしたら流血沙汰になったかも知れないのだ。
 当の犬を連れていた男性は、犬を叱りつけたものの、僕に詫びるでもなく遠ざかってしまった。

 実際のところ、これまで犬に噛まれたということはなかったのだが、吠え立てられるのは始終である。
 特に、おばさまが赤子のごとくだっこしているチワワ。チビのくせに気性は荒いのだろうか……かなりの頻度で、僕が側を通ると、吠え始める。その時の顔の醜悪なこと……歯ほ剥いた攻撃的な面構えはまさしく悪魔、とても愛玩動物とはいいかねる。

 先に、噛まれたことはないと書いたが……家族の話によると、幼稚園に上がる前後のこと……飼っていた犬に噛まれたことがあったらしい。記憶はないのだが……

 あんがいこれがトラウマになって……犬に対して無意識の警戒心が発するのだろうか?

 意識はしていないが、犬とすれ違う度に、その警戒心が相手に悟られ……こいつはヤバいと思われて拒絶反応を引き起こすのかも知れない。

 思えば、かかる感情の有りようは動物相手ばかりとは限らない。

 人間相手でも……僕の場合、訳も無くムシズが走るという人物に出くわすことがある。
例えば、テレビに出てくるタレントあたりでも、こいつが画面に出てくると、即チャンネルを切り替えていまう。元よりなんら面識もなく、気性とか発言が気にくわないということもないのだが……
 案外、無意識の裡に相手を「犬的人間」と見ているのかも知れない。

 自分でも反省はしているのだが、バイト先などでも……この好き嫌いの感情はついつい働いてしまい、あらぬ誤解を生むこともあった。
  まあ、相手にすれば……俺に何か恨みでもあるのか? ……とでも言いたくなるような態度が散見するのだろう。

 もちろん、逆の立場に立ってみるならば、敢て不快を催す言動は控えるべきだろう。

 当然、僕にして人間関係を含め、波風を立てたい訳では無い。はっきり言って「小人物」なのに違いない。
 確かに、いつまでたっても僕は「子供」のままの、自分中心主義の我が儘を引き摺っているらしい。

 まずは多少なりとも大人になるために……出くわすチワワに吠えられるのではなく、嘗められるような人間になりたいと思うのだが……

貧乏人です。創作費用に充てたいので……よろしくお願いいたします。