土用の丑の日
エアコン無縁の人間とあれば、この暑さ……さすがに団扇とお茶のがぶ飲みだけでは追いつかない。
夏も序盤というに……なんでも話によると、10月になってもまだ暑いというのだから、……先が思いやられる。
確かに、食欲は落ちている。
今日、バイト帰りに立ち寄ったスーパーで、鰻の弁当が1780円(高い方は2580円)で売っていた。思えば、土用の丑の日らしい。つい、カートに入れかけたのだが(もちろん安い方)……やはり自重した。懐の事情もあるが、僕にとっての鰻とは「アンブロシア(神の食い物)」の言い換えなのだから、素性も知れぬ鰻で夢が崩れるのを恐れたと……まあ、そう言っておこう。
もう10年近く鰻を食っていないのだから……たぶん、記憶の舌は恐ろしいほどに肥えているかも知れない。下手な鰻で、夢を潰す気にはなれないのだ。
僕は決めている。もし鰻を食うとすれば、スーパーの安物では断じてなく、国産の超一流の奴で満喫してやると。例えば「尾花」……調べてはいないが、1万はするだろう。已んぬる哉、当面、そんな日は来ないだろうが……
もちろん、かかる鰻ならば、食欲の落ちているこの時期でも舌鼓は必定だと信じている。
まあ、無い物ねだりしても始まらない。
食欲不振の時、僕の食事はかなり変則的になる。
そう。オカズが魚だろうが肉だろうが、これを摘みつつ白米をかっこむという意欲が失せているので……白米の代わりに焼きそば、オカズとしては春巻きとか肉団子、ギョウザという組み合わせになる。
あんがいこの組み合わせだと、食が進む。
確かに、夏場には白米が食いたくない……というのはガキの頃からの嗜好であった。
例えば,ガキの頃の夏場の僕の夕食の一例として、カレーを温めてご飯に掛けるのではなく、冷えたカレーをパンに塗って食ったものである。
他に好物だったのが、ミートソースである。これも、「ボロネーゼ」といった気取った奴ではなく、ママーとかキューピーの、缶詰めに入ったのがいい。
当然、これも温めずに、食パンにたっぷり塗って食べるのだ。
そして仕上げにはジュース……オレンジ、グレープ、アップル……なんでもいい。
思えば、アップルパイだけで夕食を済ませた覚えもある。
要は夏になれば、身体のタメとか栄養とかは糞を食らえというのが、僕の一貫したスタンスなのだ。
さて、鰻弁当を諦めた僕が、夕食として購ったのは出来合いのパック入りの青椒肉絲とおにぎりという組み合わせであった。
仕上げには、当然ジュース……あっ、いけねぇ! ジュースを買い忘れてた……