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暗闇の涙で断ち切った話。

平成最後の夏、私は散々な目に遭っていた。

当時付き合っていた人と別れ、無気力な、ともいかずインターンに行ったり友達に会いつつ慰めてもらう生活をしていた。

そんな中で起こった地震。ブラックアウトに見舞われ、1日半ほど電気のつかない生活を強いられた。私とサークルの友人は電気が復旧するまで一緒に過ごすことになった。

電気がつかないなりに食事を作ったり、昼間はコンビニやスーパーを巡った。暗くなってからはお湯を沸かし、桶に汲んで交代で風呂という名の水浴びをした。とうとうすることもなくなり、懐中電灯を吊るして本を読もうとしたが、普段十分な光の中で本を読んでいる私たちはストレスを感じてしまった。

そうして夜の9時には早々に布団に入った。二人で目を閉じて無理矢理眠ろうとしていると、外を歩く人の「信号がついている」という声が聞こえたような気がした。

飛び起きて、窓から見える信号を見つめても光の色は見えなかった。私たちの期待も消えて、また布団へと戻った。

こうした有事の時に心配したり、そばにいてくれるのは家族・友人、そして恋人の存在である。以前付き合っていた人とは当時別れて1ヶ月も経たないくらいだったはずだが、一つの連絡もなかった。

『薄情な』

そう思ってしまったのは、まだ傷心の中にいた私が持たない方がおめでたく、淡い期待をしてしまっていたからだ。

でも、私たちは別れることになった理由が理由であっただけに、もうあの人は私のことなんてすっかり忘れて新しい人のことをこれでもかというくらいに心配しているのだろうと思うと彼にとって私は一体何なんだったのだろうとどうしようもない気持ちになった。

そうぐるぐると思いを巡らせているうちに、涙が出てきた。布団に横たわり、真っ暗闇の中で一人静かに涙を流した。

隣に横たわっていた、この有事を共に乗り越えた彼女は別れてすぐの、本当にギタギタのボロボロだった私をご飯に連れて行ってくれたのだ。

「ひとりにしておくと、本当に心配だから」と。

はらはらと涙を零す私に、「少しでいいから食べて」と促してくれた。

あの時も私は彼女に涙を見られているのに、今回は一人、暗闇の中で泣いたのだ。

私は彼女が隣にいてくれただけでよかった。その存在があるだけで、この悲しみとどうしようもなさを断ち切れると思えた。

その涙を流した時、”これで泣くのは本当に最後だ、この暗闇に置いていける”と思えたのだった。

(Photo by lisa500ml、Thanks!)

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