《思考の柔軟性が弱いタイプ》のアセスメントとその支援の方法 その15 実例の細部から、支援の方法の本質を学ぶ-⑨ 相手の言葉を《自分言葉》で解釈する
事例9 授業中に、トイレに行きたがるのは
《自分ルール》で解釈するから
先生は「授業中にトイレに行けません。トイレは休み時間に行っておいてください」と説明し熱心に取り組んでいる。授業中にトイレに行かれると、他の子どもたちの注意集中が切れるからです。
しかし、それでも1年生のI君は授業中に「先生、トイレ」と言いながら前を押さえている。おもらしされると困るので、しかたなく先生は行かせてあげました。それから、I君は授業中にしょっちゅうトイレに行くようになった。
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【解説】先生は、3つの間違いをしています
⑴説明の「行っておいて」がだめでした。先生の言葉を《自分言葉》で解
釈していたのです。つまり、I君はトイレに行って帰ってきただけでし
た。おしっこをしてなかったのです。「だって、トイレに行っておいで
と言われただけだだもん」と思っているのです。
⑵「先生、トイレ」という《自分言葉》を「先生、トイレに行きたいで
す」と判断しています。コミュニケーションとして、間違っているのに
正していません。「先生、トイレ」は「先生はトイレです」の意味にな
ります。
⑶お願いさないで、トイレに行かせています。これはI君に『トイレに行
く』権利を与えたことになります。だから、I君は授業中にしょっちゅ
うトイレに行くようになったのです。「だって、先生は(いつでも)言
ってもいいと行ってくれたもん」と思い込んでいるのです。
【セリフ】
I君「先生、トイレ。」
先生「先生は、トイレではありません。それは、トイレに行きたいというこ
とかな(「想像」)。」
I君「そう。」
先生「じゃ、『先生、トレイに行きたいです』と言ってください(「覚え
て」)。」
I君「先生、トレイに行きたいです。」
先生「よく言えました(「共感」)。でも、ダメです。授業中はトイレにい
けません(「覚えて」)。知っているでしょう?I君は休み時間にトイ
レに行かなかったの?」
I君「行ったよ。」
その時、他の子どもが「I君は、おしっこしなかったよ」と教えてくれた。
先生「えー。トイレに行ってきただけ?そうか。それは先生の言い方が悪か
ったね(「共感」)。ごめんね。じゃ、言い直すね。『おしっこは、休
み時間にトイレに行ってしてきてください』(「覚えて」)どう?分か
ったかな?」
I君「分かった。」
先生「じゃ、言ってみて。」
I君「おしっこは、休み時間にしておく。」
先生「そうだね。よく覚えました(「共感」)。じゃ、聞くけど、授業中に
トイレには行けますか?いけませんか?」
I君「行けません。」
先生「そうですね。正解です(「共感」)。これらは、ルールを守ってくだ
さいね。」
I君「はい!」
先生「いい返事ですね(「共感」)。じゃ、今日だけ、特別に行って来ても
いいですよ。特別ですよ。」
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