第2ステップは、信頼関係を利用してルール・常識・マナーを「覚えて」もらうその2
授業中に「つまらん」と叫ぶ子ども
3時間目は、算数の時間です。今日は、初めて「2桁を1桁で割ると答えが1桁になる筆算」を習います。担任の先生は、筆算の横に図などを書いて、丁寧に説明しています。
村内先生がよし君の様子を見ていると、初めてのことなので興味があるのか、担任の先生の説明を聞いています。しかし、顔は少し曇っています。
そして、担任の先生が「練習問題を、してみましょう」と問題が4問だけのプリント配ったときです。よし君が、ガラガラ声で叫びました。
よし「あーあ。つまらん。おもんないわ。」
担任の先生が、近づいて叱ろうとしましたが、村内先生が目で合図して止めました。そして、素早くよし君に近づいてささやきました。
村内「どうした、困っているみたいだね(「共感」)。」
よし「困ってないわ。」
村内「『つまらん』と言うのは、『割り算が、分からない』という意味でし
ょう(「想像」)。違う?」
よし君は、黙っています。村内先生の「想像」が当たっているからです。
村内「やっぱりそうか(「共感」)。さっきの先生の説明では分からなかっ
たんだね。それりゃ、分からなかったら『つまらない』ね(「共
感」)。でもね、『つまらない』では、何をして欲しいのか、よく分か
らないんだよ。下手したら、担任の先生に叱られちゃうよ。」
信頼している村内先生が「どこがおかしいか」説明をしているので、黙って聞いています。
村内「そういうときはね『分からないから、もう1回説明してください』
っていうんだよ(「覚えて」)。」
よし君は「そういうことか」と思いました。
村内「そしたらね、先生がやってきて、もう1回教えてあげるからね(「覚えて」)。分かった。」
よし君は、頷きました。
村内「じゃ、1回言ってみてください。」
よし「もう1回、教えてください(「すみません」)。」
村内「はい、分かりました。『もう1回、教えて』なんて意欲あるね(「共
感」)。割り算が、できるようになりたいんだね(「想像」)。じゃ、
練習問題で説明するよ。35÷7の問題だね。よし君は『35の中に、
7がいくつあると思いますか?』というのが、分からなんじゃない
の?」
よし「そんなん、分かるはずがない。」
村内「そうだよね。そういうときは、九九を使うといいんだよ。九九の七の
段が言える?」
よし「それなら簡単。なないちが7 ななにが14 ・・・ななごが35。」
村内「ストップ。35になったよ。」
よし「そうか!7が、5個だ。」
こうして、村内先生とよし君の1対1の勉強は続いていきました。最後の4問まで終わると、よし君は満面の笑みで、担任の先生のところへプリント持っていきました。そして、担任の先生に「授業中、叫ぶのは他の人のじゃまだね」と言われると、素直に「ごめんなさい」と言うことができました。