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六本木のこの景色もあと少しだから。
六本木が新しい景色に生まれ変わるそうだ。
現在、六本木5丁目計画というのが進んでいる。六本木交差点から、麻布台ヒルズに向かって歩くと古いビルが密集しているが、その年季の入ったビルがほとんど解体されては、新しい高層ビルができるらしい。
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わたしは解体されるエリアのバブルの名残がある六本木が好きで、通る度にノスタルジックな気持ちになっていた。
この辺りは夜の店が密集している。ほんの少し怪しい店も。
このエリアはミッドタウン、六本木ヒルズ、アークヒルズ、麻布台ヒルズに囲まれてはいるけれど、昭和の匂いと怪しい雰囲気がある六本木5丁目は近代的な建物に挟まれても物怖じせず堂々と風格を表してて、いい感じに中和していた。
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建物自体も年季が入っているから仕方ないけれど、ここのエリアがなくなれば六本木から唯一残っていたギラギラが消失して、完全にハイセンスなオシャレな街になるのだろうなぁ。
全て近代的な建物もなんだかつまらない気もするけれど、これが時代の変化ってヤツなんだろう。少し悲しいなぁ。
六本木交差点から、東京タワー方面に歩き続けて通勤する日々。
振り返れば、田舎者のミーハーにとっては、この景色が見れることが嬉しくて、東京タワー方面に歩いていく自分がほんの少し誇らしかった。そんな誇れる自分でいれるために、あと1日、あと1日と積み重ねていたらいつの間にか10年が経過していた。
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仕事で悔し涙を流した日、振り返れば幻想的な色をした東京タワーはわたしを励ましてくれた。その赤く照らし続ける東京タワーは、やっぱり息を飲むほど美しくて、何度見ても飽きなかった。わたしがその近くに存在しては、背景の一部として同化しているかもなんて、嘘みたいで。
「あぁ、わたし東京にいるんだ」なんてB級映画の主人公になったかのように、少し失笑しながらも想いに馳せてしまう。
そう、東京タワーはいつだって見惚れた者を特別にしてくれる。
この街が目まぐるしく変化し続ける中、外苑東通りから東京タワー方面に向かって歩き続けよう。
せめてこの景色が変わるまではノスタルジックに浸りたい。 初めてこの地に降り立ったとき、浮かれていたあの気持ちを思い出して。