見出し画像

'Anatomy of a Fall'を蹴落とした『ポトフ 美食家と料理人』を観てきました!

 カンヌ国際映画祭を受賞した'Anatomy of a Fall'。

 ほとんどの賞が会員の投票でノミネーションが決まるアカデミー賞ですが、国際長編映画賞は各国からのエントリーを受けた上で、ノミネーションが決まります。

 日本のエントリーは、ヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』。
 そしてフランス代表は、'Anatomy of a Fall'ではなく、今回東京国際映画祭でも公開された『ポトフ 美食家と料理人』でした。

 このことに驚いた映画ファンが少なくなく、エントリーが決定した際に大分ざわついていました。

 'Anatomy of a Fall'は、その評判が高く、現在も作品賞ノミネートの可能性が高いと言われています。
 それ故にフランス代表として選ばれたのが『ポトフ〜』だったことがサプライズだったのです。

『ポトフ 美食家と料理人』

 この映画を監督したのはトラン・アン・ユン。

 フランスの監督ですが、前作はオドレイ・トトゥを主演に迎えた『エタニティ 永遠の花たちへ』。
 出身はベトナムだからかアジアに関する映画が多く、今回衣装を担当したパートナーのトラン・ヌー・イェン・ケー(『代表作『青いパパイヤの香り』の主演女優)も「今回もフランスを題材にしたものだったから驚いた」と言ってました。

 今回何に驚いたって『ピアニスト』でイザベル・ユペールを手籠めにしちゃう美青年だったブノワ・マジメルが太ったおじさんになっていたこと…。(来日されてます)

 本人も気にしてるのか誰も何も言ってないのに「監督に料理人だからって、恰幅が良い必要はないんじゃないか?細面でもいいんじゃないかと言ったんだよ。オファー受けたときに僕は痩せていたからね。でも、撮影がはじまる頃には太ってしまって、有言不実行になってしまったんだよ。」と弁明してました。

 でも映画の内容的には、恰幅があって正解だったと思いますね。
 これでもかという感じの高カロリーと思われるフランス料理が次々と出てくるので、痩せてたらちょっと説得力なかったです。

アカデミー賞の可能性は?

 映画ファンをざわつかせた『ポトフ〜』のアカデミー賞エントリーですが、実際のアカデミー賞の可能性はどうでしょうか。

 ここで過去に国際長編映画賞(旧外国語映画賞)を受賞した作品と出品国について振り返ってみます。

【第95回】'22-23シーズン:『西部戦線異状なし』(ドイツ) 
【第94回】'21-22シーズン:『ドライブ・マイ・カー』(日本) 
【第93回】'20-21シーズン:『アナザーラウンド』(デンマーク)
【第92回】'19-20シーズン:『パラサイト 半地下の家族』(韓国)
【第91回】'18-19シーズン:『ROMA ローマ』(メキシコ) 
【第90回】'17-18シーズン:『ナチュラルウーマン』(チリ)
【第89回】'16-17シーズン:『セールスマン』(イラン)
【第88回】'15-16シーズン:『サウルの息子』(ハンガリー)
【第87回】'14-15シーズン:『イーダ』(ポーランド)
【第86回】'13-14シーズン:『グレート・ビューティー 追憶のローマ』(イタリア)

過去10年のアカデミー賞 国際長編映画賞/外国語映画賞 受賞作品

 こうして振り返ってみて意外だったのは、受賞した国がすべて異なっていることです。
 このうち、フランスの作品がノミネートされたのは第88回の『裸足の季節』だけで、受賞はありません。

 このデータからすると、ノミネートはもちろん、受賞の可能性も正直高くなさそうです。
 日本はこの10年で2回ノミネート(もうひとつは『万引き家族』)して、1回受賞です。優秀です。

'Anatomy of a Fall'のオスカー参戦は?

 代表の本命と言われていた'Anatomy of a Fall'はどうでしょうか?
 パルム・ドールについて振り返ってみます。

2022年:『逆転のトライアングル』(スウェーデン/仏/英/独)
2021年:『TITAN/チタン』(仏/ベルギー)
2020年:未実施
2019年:『パラサイト 半地下の家族』(韓国)
2018年:『万引き家族』(日本)
2017年:『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(スウェーデン/デンマーク/米/仏)
2016年:『わたしは、ダニエル・ブレイク』(英/仏/ベルギー)
2015年:『ディーパンの闘い』(仏)
2014年:『雪の轍』(トルコ/独/仏)
2013年:『アデル、ブルーは熱い色』(仏)

過去10年のカンヌ国際映画祭パルムドール一覧

 このうち、アカデミー賞に絡んだのは『逆転のトライアングル』『パラサイト 半地下の家族』『万引き家族』の3作のみです。
 カンヌとオスカーは相性が悪いということはよく言われているのですが、振り返ってみるとほんとにそのとおりだなという感じです。

 むしろ直近3作絡んだのが珍しい感じすらします。

 ということで、データから見ると同じく'Anatomy of a Fall'もアカデミー賞に絡む可能性は決して高くないのでありました。

 ただ主演のザンドラ・ヒュラーは、国際長編映画賞の本命と言われている'The Zone of Interest'にも出演しており、注目度がめちゃくちゃ高まってます。

 それに加え、'Anatomy of a Fall'のただならぬ感は半端なく、映画ファンの勘は正しい、つまり作品賞ノミネートの可能性は低くないと見てます。

いいなと思ったら応援しよう!

アカデミー賞マニアのひと・デザイナー|ナッカ・ザッカーバーグ
サポートなどをしていただいた方には現在おすすめのYouTubeチャンネルランキング一位〜五位をランダムにご紹介しています! いただいたサポートなどは、活動費または子どもの教育に関する寄附に充てさせていただきます。

この記事が参加している募集