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ぷうま
2021年7月10日 07:46
お地蔵さんは私の夢の中に現れて言いました。「あなたのお父さんの重荷は消えました。地蔵としての私の勤めも終わりです。そういえば、長い間忘れていたのですが、かつて私は遠い北の国の王子でした。これから、友だちのツバメが待っているところに帰ります。ツバメ。かわいいですよね。あなたにもツバメはやってくるでしょう。もし、寒空にツバメを見かけたらどうか優しく見守ってあげてくだ
2021年7月9日 06:33
結局、お地蔵さんが見つかったのは、父が亡くなった後でした。父と一緒に桃の畑を眺めた丘の上に、父の墓を作るためにひと掘りしたらあっさり出てきたんです。亡くなった父によく似た顔をしていました。私を救い出す前の晩、父はいわれのない憤りと妬みから私の生家を焼くつもりだったのだそうです。この世界で父はそれを免れましたがもう一つの世界では、父は自分の犯した罪のために尽きることのない
2021年7月4日 13:27
父はお地蔵さんを探してあちこち掘りました。しかし1年たっても2年たってお地蔵さんは出てきません。その代わり、堀った後から桃の木が生えてきていつのまにかたくさんの実をつけるようになりました。掘れども掘れどもお地蔵さんは見つからず、桃の畑のほうはどんどんと広がっていきました。あたり一帯が津波のように流されていましたから父一人でやっていたのではなかなかはかどりません。そこ
2021年7月4日 08:11
「私の生みの親は、まだ私が物心つかないうち、崖崩れで亡くなりました。今の育ての父は、そんな身寄りのない私を引き取って育ててくれました。父は村の人たちと一緒に村の荒れ地を広く耕しで村を豊かにして、村長として敬われていたんじゃないかと思います。ええ、確かに(父は)ちょっと変わったところがあったかもしれません。お地蔵さんの話とか。自分の頭の中にお地蔵さんが入ってきたっていう、あの
2021年7月4日 07:53
男が呆然としていると、どこからか小さな泣き声が聞こえてきました。かすかに聞こえる音を頼りに、がれきを掘り起こしてゆくと、小さなひとりの赤ちゃんが泣いていました。赤ちゃんは倒れかけたたんすの隙間に怪我一つなく生きていました。男がそうっと赤ちゃんを抱き上げ、安全そうな場所へもどってくると、どうっという音をたてて崖が崩れ、家はすっかり埋まってしまいました。やがて集まってきた村人た
2021年6月29日 18:25
むかしあるところに、幸福なお地蔵さんがいました。金や宝石の飾りはついていませんでしたが村人たちによく洗ってもらっていたのでいつもきれいでした。お地蔵さんのそばにはお菓子や果物やお酒などがいつもお供えされていました。ある晩、遠い東の果てのほうから、みすぼらしい身なりをした、鋭い目つきの旅人が村にやってきました。男はお地蔵さんのお供え物に目をつけると、くんくん匂いをかい
2021年6月29日 19:44
男が夢の中でごみだめのような部屋の壁を蹴飛ばしているとお地蔵さんがすうっと目の前に現れました。男がびっくりして眺める前でお地蔵さんは大きく大きく大きくなって男を腕の中に抱き上げました。男は逃げ出そうとしましたが、赤ん坊のように手も足も出ません。「こんなところにいたら、危ないところに落ちてしまう。もっと安全なところに連れて行ってあげましょう。」お地蔵さんはいくつかの部